「amadana」 クリエイティブディレクター熊本氏に聞くデザインの良いゴルフクラブって何?
「amadana」 クリエイティブディレクター熊本氏に聞くデザインの良いゴルフクラブって何?
スポーツ用品である以上、ゴルフクラブは性能が第一だ。その形状はゴルフ競技の歴史や技術的な革新を経て進化してきた一方、カラーや形状、ロゴなど外見的な意匠でも魅力を増してきた面がある。ゴルフクラブをプロダクトデザイン的な視点で紐解くことで、マイクラブとより濃厚な関係が結べるのではないか。家電にいち早くデザイン的な視点を持ち込み、日本のプロダクトデザイン史に名を刻んだクリエイティブディレクターに、プロダクトデザイン的な視点から見るゴルフクラブのデザインについて聞いた。※本記事はEVEN 2022年2月号に掲載された記事を再構成したものです。
amadana代表 熊本浩志
1975年宮崎県生まれ。大学卒業後、東芝へ入社。2002年リアル・フリート(現・アマダナ)を設立し、家電ブランド「アマダナ」をスタート。現在は総合クリエイティブ商社としてグループ会社を複数展開し、経営戦略からブランドマネジメント、商品企画、マーケティングなど幅広い事業を展開。
機能美の実現はデザインの絶対条件
2003年のブランド発足以降、美しく、機能性に富んだ電化製品を次々に生み出してきた「アマダナ」。日本のデザイン家電業界を牽引してきた存在であるが、現在では家電の分野だけにとどまらず、コーヒー器具およびコーヒー豆の企画・開発・販売やカフェ運営などを行う「BeastyCoffee」、ボーダレスに音楽を楽しむためのソリューションブランド「アマダナ ミュージック」、スポーツビジネスのDtoCを実現するデザインファーム「アマダナ スポーツエンターテイメント」、大学のコミュニティマーチャンダイジングプラットフォームを提案する「カレッジマーケット」など、クリエイティブ総合商社として多岐にわたる事業を展開している。 アマダナを率いるのは、総合スポーツクラブ「東京ヴェルディ」のディレクターであり、その野球カテゴリーのGMでもある熊本浩志氏だ。社会人野球チームからスカウトされるほどの実力を有す生粋のスポーツマンで、年間50ラウンド以上をこなすゴルファーでもある。長年、プロダクトデザインに携わり、スポーツビジネスも手がける熊本さんにとって、「デザインの良いゴルフクラブ」とはどのようなものなのだろうか。 「一概にはいえないのですが、まずクラブを含めるマスプロダクト全般において、デザインは制約のかたまりなんですね。パフォーマンスを生かすために導かれるデザインと、表層的なデザインの両方が必ず求められます。よって機能性と美しさを両立させていることは、マスプロダクトの絶対条件でしょう」。 機能美を大前提ととらえる熊本さんの考えは、ものづくりの第一線で活躍するクリエイターだからこそ感じさせる説得力がある。 「機能美を叶えるうえで、ブランドの規模感は非常に影響しています。近年、ゴルフクラブは海外ブランドが人気を集めていますよね。なぜかというと、グローバルに展開しているがゆえ、莫大な予算を投じられるからなんです。マーケットシェアが高ければ、コストがかかっても単価は下がりますし、パーツを製造する企業だって受注数の多いブランドと取り引きしたいですから、技術力のある企業とも協業できる。結果、多くのゴルファーに支持される、優れた製品がつくられるんです」。