世界の大物が集結、「東京・春・音楽祭」プログラム発表!
現代音楽にもスポット。生誕100年のブーレーズ 上述の《こうもり》の作曲者ヨハン・シュトラウス2世は来年が生誕200年のメモリアル・イヤーなのだが、「東京・春・音楽祭」は、前衛音楽の作曲家であり人気指揮者でもあったピエール・ブーレーズ(1925~2016)の生誕100年にも光を当てているのがかっこいい。 まず、ブーレーズがパリで創設した現代音楽集団「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」による 2 days。 初日は《カミングスは詩人である》(1970/1986、合唱+小オーケストラ)、《シュル・アンシーズ》(1996/1998、3台のピアノ+3台のハープ+打楽器群)のブーレーズ作品2曲に、スイスの作曲家ミカエル・ジャルレ(1958~ )の新作を含む2曲を合わせたプログラム[4月9日(水)・東京文化会館大ホール]。 2日目はオール・ブーレーズで、《二重の影の対話》(1985)、《12のノタシオン》(1945)、《アンシーズ》(1994/2001)、《アンセム 2》(1997)と並ぶ、独奏楽器および独奏楽器+ライヴ・エレクトロニクスのための作品の一夜[4月10日(木)・東京文化会館小ホール]。 現代音楽のコンサートというと、「わかる人にはわかる」的な、やや空席多めの客席をイメージしてしまいがちだけれど、アンサンブル・アンテルコンタンポランは、前回の2024年の公演が満席に近い盛況ぶりだったのが頼もしい。 そのアンテルコンタンポランをモデルにウィーンで結成された現代音楽グループ「クラングフォルム・ウィーン」も、ブーレーズ、そして同い年のルチアーノ・ベリオ(1925~2003)のメモリアル・プログラムを携えてくる[3月26日(水)・東京文化会館小ホール]。ブーレーズ作品が、5人の奏者のための《即興曲~カルマス博士のための》(1969)と20世紀音楽の記念碑的名曲《ル・マルトー・サン・メートル》(1955)、ベリオが《フォーク・ソングス》(1964)。そしてブーレーズ&アンテルコンタンポランが1994年に「東京の夏」音楽祭で初演したフィリップ・マヌリ(1952~ )の《東京のパッサカリア》。 ウィーンのグループだけに、彼らはシュトラウス2世のメモリアル公演も持つ[3月28日(金)・東京文化会館小ホール]。といっても、ちょっと斜めから切り込むようなセンスのいいプログラムで、オーストリアの作曲家ヴォルフガング・ミッテラー(1958~ )がシュトラウスの音楽の数々をリミックスした《トリッチ・トラッチ》(2025初演予定)の日本初演。おなじみのシュトラウスが、どんなことになるのやら。ワクワク。 リサイタル、室内楽、そして特別なミュージアム・コンサートも! 東京文化会館小ホールでの器楽・声楽のリサイタルや室内楽公演も盛りだくさん。藤木大地(カウンターテナー)による新シリーズ「にほんの歌」[3月15日(土)]。クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)のシューマン歌曲集[3月19日(水)、22日(土)]、キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)のソロ・リサイタル[4月3日(木)]とブラームスの室内楽[4月5日(土)]、ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)のソロと室内楽による「シューベルトの世界」全3夜[4月15日(火)、18(金)、19日(土)]、などなど……。通も唸るスターたちが春の上野に集結する。 さらに。忘れてはいけないのが、上野公園に集まっている美術館・博物館を会場に行なわれる「ミュージアム・コンサート」。東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館という、歴史建築、名建築で味わうコンサートは、「東京・春・音楽祭」ならではの特別な体験だ。個人的なおすすめは、東京国立博物館で恒例の「東博でバッハ」。なかでも法隆寺宝物館の、ガラス張りの美しいエントランスでの公演はじつに幻想的だ。そして国立科学博物館地球館の、数千万年前に生きた水生巨大生物たちの骨格標本の下で聴くコンサートも超ユニーク。人気(ひとけ)のない暗い夜のミュージアムへ向かうアプローチも、ちょっとドキドキする。 2025年の「東京・春・音楽祭」も豪華なラインナップ。とても聴ききれない。できれば1ヶ月間、仕事を休み、上野に住んで全部聴きたいぐらい。じつに悩ましい。 取材・文:宮本明 東京・春・音楽祭2025 2025年3月14日(金)から4月20日(日)まで