世界の大物が集結、「東京・春・音楽祭」プログラム発表!
ようやく秋の気配が漂い始めた今年の東京。でも秋も冬も飛び越えて、一気に春の話題が飛び込んできた。桜の開花とともに春の訪れを告げる「東京・春・音楽祭」。その第21回の開催概要が決まり、10月29日に記者発表が行なわれた。 【画像】その他の写真 「東京・春・音楽祭」は毎春、東京・上野の東京文化会館を中心に開催される大規模音楽祭。2025年は3月14日(金)から4月20日(日)まで、1か月以上にわたって約80公演(有料公演)が繰り広げられる。 音楽祭の「大黒柱」──世界的指揮者ヤノフスキとムーティ 近年の「東京・春・音楽祭」を象徴する極太の柱が、ふたりの世界的指揮者、マレク・ヤノフスキとリッカルド・ムーティだ。番付のトップに、タイプの異なるこの両横綱が座る陣容はなんともぜいたく。現代の大巨匠二人をパスポートなしで続けざまに聴ける音楽都市・東京の凄みとありがたさを実感できる。 まずヤノフスキ。来年2月に86歳を迎える巨匠が、恒例の「ワーグナー・シリーズ」で《パルジファル》(演奏会形式)を振る[3月27日(木)、30日(日)・東京文化会館大ホール]。2021年にコロナ禍で中止された公演。いわばリベンジ。 周知のように、演出が音楽を邪魔するのを嫌い、もはや原則的に演奏会形式でしかオペラを指揮しないヤノフスキ。ワーグナーのオーケストラ語法の集大成が凝縮された最後の作品《パルジファル》は、そんな頑強な信念を貫くマエストロにふさわしい、魅力的なオーケストラ・サウンドがあふれる。オーケストラは、もちろん今年もNHK交響楽団。題名役は昨年の《トリスタンとイゾルデ》で圧巻のトリスタンを歌ったスチュアート・スケルトン。世界屈指のヘルデン・テノールが、今年も「東京・春・音楽祭」のワーグナーに帰ってくる。 ヤノフスキは翌週にも注目公演がある。ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》だ[4月4日(金)、6日(日)・東京文化会館大ホール]。じつはこれも、コロナ禍で一度中止となったプログラム。ベートーヴェン・イヤーの2020年のこと。あの年に聴けなかったベートーヴェン関連のコンサートの中で、いちばん残念だったのがこれだったかもしれない。企画が復活したのが、とてもうれしい。生きててよかった! オケはこちらもN響。 もう一方の大看板のムーティ。まだまだエネルギッシュだけれど、彼ももう83歳だ。今年(2024年)と同様、ライフワークの「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」は秋に分離開催予定。春はレスピーギ《ローマの松》をメイン・ディッシュに、オペラの序曲や間奏曲を合わせたオール・イタリア・プログラムを聴かせてくれる[4月11日(金)、12日(土)・東京文化会館大ホール]。オペラ《ワリー》のみが知られる作曲家アルフレード・カタラーニの《コンテンプラツィオーネ(瞑想)》は、「この機会にぜひ!」とムーティがおすすめの管弦楽曲。オケはもはや日本でのムーティの手兵と言える、中堅・若手の精鋭メンバーによる「東京春祭オーケストラ」。 演奏会形式で音楽に集中。充実のオペラ・ラインナップ 年々オペラのラインナップが充実してきているのは、「東京・春・音楽祭」がもともと2005年に「東京のオペラの森」として始まった歴史と無縁ではないだろう。来春も、上述のワーグナー以外に、プッチーニ《蝶々夫人》とヨハン・シュトラウス2世《こうもり》が上演される(演奏会形式)。 《蝶々夫人》(東京春祭プッチーニ・シリーズ)は現在ボローニャ歌劇場の音楽監督を務めるオクサーナ・リーニフの指揮。2021年には女性として初めてバイロイト音楽祭を指揮したウクライナ出身の注目株だ。題名役にはクロアチアのソプラノ、ラナ・コス。彼女は声楽家としては異例に早い17歳でデビューを果たし、すでに豊富なキャリアを誇る。オーケストラは読売日本交響楽団[4月10日(木)、13日(日)・東京文化会館大ホール]。 《こうもり》では、ジョナサン・ノットが、音楽監督を務める東京交響楽団を率いる。近年演奏会形式のオペラ上演で破格の成果をあげているノット&東響。「演奏会形式で音楽に集中できる《こうもり》を」という主催者の意向に共感しての東京春祭初登場。歌手陣にはアイゼンシュタインにアドリアン・エレート、ファルケ博士にマルクス・アイヒェと、「東京・春・音楽祭」でもおなじみの陣容が揃う(ロザリンデ役は後日発表)。音楽祭の掉尾を飾る最終公演[4月18日(金)、20日(日)・東京文化会館大ホール]。