「進路決まらず申し訳ない」と話す子が増える深刻 やりたいことを早く見つける必要はあるのか?
推薦入試の拡大など受験の選択肢が多くなる中、高校生たちはどのような道を選べばよいのか日々頭を悩ませています。『思考実験入門 世界五分前仮説からギュゲスの指輪まで』を上梓した、かえつ有明高等学校の社会科教師である前田圭介氏が、今を生きる若者たちに必要な考え方について、お話しします。 【写真】『思考実験入門 世界五分前仮説からギュゲスの指輪まで 』(前田 圭介 ・東大カルぺ・ディエム著)では、哲学者たちの思考実験を精選し、その意図や現代的意義を解説。 ■申し訳なさを口にする高校生 私は教員として働く中で、生徒の悩みや学習状況、進路など、生徒が抱えるさまざまな悩みを聞き、1人ひとりに適切なアドバイスができるように尽力しています。
そんな中で、最近気がかりなことがあります。それは「やりたいことが見つからないことへの申し訳なさ」を口にする生徒が増えている、ということです。 いつの時代も「やりたいことが見つからない」「将来のことが全然決まっていない」という生徒はいるものです。 しかし最近は、そのことに対して「申し訳ない」という子が多く見受けられます。 ある生徒は「先生、私はやりたいことが見つかっていないんです。ごめんなさい」と私に謝ってきました。
「え? なんで謝るの?」と聞いたところ、「私はもう高校生で、将来のこととか決めないといけない時期じゃないですか。それなのに、まだ決まっていないのは、申し訳ないなって」と口にしました。 このような生徒がいる一方で、高1の4月の時点で志望する大学や学部がバッチリと決まっていて、中には第3志望まで決めている生徒もいます。 「早くから将来の目標を決めている同級生」の姿を見て、周りの生徒たちにも「早く決めないといけない」という焦りが生まれているようです。
その焦りに拍車をかけているのが、生徒の親御さんである場合もあります。生徒と親御さんとの三者面談で、親御さんから「この子、全然将来のこと決まっていないんですよ。ごめんなさいね、先生」と言われることもしばしばあります。 先ほどお話しした通り、「やりたいことが見つからない」というのは、昔からよくある話だと思います。高校生の時点で、大学進学や就職に向けたプランを綿密に考えていた人なんて、今社会で働く人たちの中に果たしてどれだけいるのでしょうか。