青学は日本のマラソン界を変えることができるのか?
正月の箱根駅伝で3連覇を達成した青学大が次なる“野望”に向けて動き出している。原晋監督が「サンキュー大作戦パート2」と命名したマラソンへの挑戦だ。メディアを通じて、様々な提言をしている原監督だが、スポーツ新聞の取材に対して、以下のように話している。 「2020年東京五輪はすぐにやってくる。劇的な変化を恐れていては進歩はない。実業団チームとタイアップし、互いの練習方法の長所を取り入れたり、指導者や選手同士が刺激し合うことは大きなプラスになる。大手企業だけに頼るのではなく、元気のいい中小企業に個人スポンサーとなってもらい、マラソンの競技人口とスポンサー数を増やす。選手1人の個人スポンサーであれば、給料や合宿費などを含めて年間1000万円ほどで済むだろう。箱根駅伝人気を社会人の強化につなげることが重要だ。青学大で勝ち続けてこそ、私の提言も説得力が伴う。これからも批判を覚悟の上で、日本陸上界の劇薬でありたい」 原監督は今年4月に立ち上がったGMOアスリーツのアドバイザーを務めており、すでに新プロジェクトは始動している。GMOアスリーツは、前・上武大駅伝部監督の花田勝彦監督が率いているチーム。上武大OB3名と、三木啓貴、渡邉利典、橋本崚の青学大OB3名がスタートメンバーだ。そして今年4月には、青学大の絶対エース・一色恭志が加わることになる。一色は夏にGMOアスリーツの合宿に参加するなど、すでに花田監督と原監督との“協力体制”でマラソン練習に取り組んでいる。 また青学大OBの伊藤弘毅(アサヒGHD)、松蔭大時代に関東学生選抜のメンバーとして4年連続で箱根駅伝に出場した梶原有高(厚木市陸協)なども青学大の選手たちと一緒にトレーニングをしている。原監督は「チーム・アオガク」ともいうべき集団の指揮官として、マラソンでも勝負するつもりなのだ。 青学大が大々的にマラソン参戦したのが、昨年の東京だ。他の日本勢が振るわなかったこともあり、青学大の活躍がクローズアップされた。2年生(当時)の下田裕太が2時間11分34秒の10位。日本人2番で元気よくフィニッシュすると、3年生(当時)の一色恭志が日本人3番(2時間11分45秒)でゴールに駆け込んだ。橋本崚と渡邉利典の4年生コンビ(当時/現・GMOアスリーツ)も2時間14分38秒と2時間16分01秒でまとめている。 マラソンに同じ大学の選手が4名出場することが珍しく、しかも全員がきちんと42.195kmを走り切ったことに驚かされた。そして、マラソンへのアプローチもアイディアマンの原監督らしく、ユニークだった。 日本のマラソン練習は「40km走」を軸にしているパターンがほとんどで、トップ選手は40km走を4~5本ほどこなして、本番を迎える。40km走のタイムは2時間10~15分前後。なかには2時間5分というスピードでこなす選手もいる。 一方、青学大のマラソン練習は、「42.195km走」が柱となる。昨年は1月中旬と2月初旬に行った。タイムは2時間30分ほどと速くない。キロ4分で入り、ビルドアップで40kmまではキロ3分30秒ほどのペースだ。しかし、ラストの2.195kmは「力を振り絞ること」を意識してペースを上げる。新たな発想でチャレンジして、東京マラソンを席巻した。