30年で大学生が親からもらう生活費は<4分の1>に。不景気を耐える中で「いい大学・いい企業に入る」「盛大な結婚式」を幸せと思わなくなった若者の価値観はどう変わったか
三省堂の「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」の新語ベスト10の大賞に、タイパ(タイムパフォーマンス)が選ばれました。「時間的な効率」を意味するこの言葉は、「若い世代はタイパを追求する」という文脈で使われるそうです。そんな若い世代、特に「Z世代」と呼ばれる若者には「とにかく失敗したくない」という行動原理があると語るのはニッセイ基礎研究所生活研究部研究員の廣瀬涼さん。廣瀬さんは「不景気により若者の消費志向も変化している」と言っていて――。 「タイパ」重視が当たり前・Z世代の消費行動のナゾを解く!『タイパの経済学』 * * * * * * * ◆大学生の生活費は30年で4分の1に コスパが追求されるようになった要因は不景気にあり、「失われた30年」を中心に、日本の経済の停滞がコスパという概念が普及した要因であると考える。 一方、若者を中心にタイパが追求されるようになったコンテンツ視聴方法においても、不景気が大きく関係している。 東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)が、1都3県(東京、埼玉、千葉、栃木)の11の私立大学・短期大学に2022年度に入学した新入生の保護者を対象に行った「私立大学新入生の家計負担調査 2022年度」によれば、月平均仕送り額から家賃を除いた生活費は2万1300円であった。 ちなみに過去最高は1990年度の7万3800円で、この30年間で大学生が親からもらえる生活費は4分の1近くに減少した。
◆若者の消費志向の変化 また、JSコーポレーションが高校生を対象に行った「お小遣い額 お小遣いの使い道(2023年調査)」によれば、毎月もらうお小遣いの額は約半数が5000円以下であることがわかっている。 物価の高騰や交際費の上昇を考慮に入れると、大学生も高校生も満足のいく消費体験を求めるのならば、もらっているお小遣いだけでは十分とはいえないだろう。 不景気により若者の消費志向も変化している。 昭和後期や平成初期には高度経済成長やバブルの名残りもあり、「いい大学に入り、いい企業に就職する」「結婚して盛大に結婚式を開く」といった誰もが描きやすい画一化された幸せが存在していた。 親の敷いたレールがまさにこれで、世間様と比較したときに、型にはまった生活ができているということ自体が幸せととらえられていたのかもしれない。
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