楽天復帰濃厚? なぜ岩隈久志はマリナーズを退団することになったのか
岩隈としては、なんとか昨季中に戻りたかった。チームがプレイオフ出場を争っていた、というのもある。彼自身がフリーエージェントになるため、投げられるところを見せておきたい、という思いもあった。 「ダメなら(引退も)よぎりましたからね」 本当なら、もっと早い段階で手術すべきだったのかもしれない。しかし、昨年の途中で手術に踏み切れば、翌年ーーつまり今年の契約を断念せざるを得ない。それは事実上、引退に繋がる可能性もあったが、あのシミュレーションゲームの後、手術を勧めてきたのは、マリナーズ側だった。 「それならば、という感じでした」 シーズンも終わろうとしている9月に、球団がFAになる投手に手術を勧めることは、普通ではありえない。あるとすればそれは来季も契約の意思がある、ということ。それで岩隈も手術に踏み切った。 来季に関しては、仮に今年は投げられなくても、マイナー契約をオファーするのでは、と見られていた。状態だけで考えれば、昨年よりもプラス要素が多い。確かに年齢を一つ重ねたが、マリナーズにリスクはない。昨年の計らいのほうがむしろギャンブルで、こうなることも想定内だったはずである。 昨年の今頃、もうだめか、と一時は諦めかけた岩隈。一方でチームは、手術をすれば復帰できると判断した。今年は、ここに来てようやく岩隈は手応えを掴んだ。しかしながら、チームはそうは捉えなかった。 昨年と今年で両者の考えが対照的だが、岩隈が他球団への移籍を考えず、日本球界復帰に絞ったことは、そこにわだかまりはないことを教えてくれる。 岩隈があくまでもメジャーにこだわるなら、どこかとマイナー契約を結ぶことが出来たはず。それをしなかったということは、マリナーズ以外のユニホームを着たくない、ということではないか。 感謝こそすれ、後味の悪さはない。 日本球界復帰に関しても、「いつかは」と岩隈は考えていた。その時はまだ余力がある段階で、と。であれば今回、日本球界復帰という選択は難しいものではなかったのかもしれない。 楽天が早くも、獲得に乗り気だ。岩隈は、仙台に帰ることになるのか。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)