悪役だったエルサを変えた『Let It Go』 『アナと雪の女王』に隠された真実
日本のみならず、世界中で大ヒットを記録している『アナと雪の女王』。日本での興行収入は、洋画アニメーション作品として、No.1となっただけでなく、全世界における興行収入でも6位(4月21日現在)になるなど、好調をキープしている。この『アナと雪の女王』、ストーリーもさることながら、話題を集めているのは、楽曲の素晴らしさ。世界各国で観客を魅了し続けている。この作品で歌曲を担当したのが、ロバート・ロペス(以下、ロバート)、クリステン・アンダーソン=ロペス(以下、クリステン)夫妻だ。オスカーに輝いた主題歌『Let It Go』をはじめ、劇中の歌曲を担当した二人が、この作品に秘められた真実、また作品への思いを語った。 【動画・予告編】アナと雪の女王
■当初、エルサは悪役だった 『Let It Go』を書き上げたロバートは、製作総指揮のジョン・ラセターに楽曲を渡した。ここから、この作品の設定が大きく変わることになる。実は、当初、エルサの演じる役は“悪役”で、アナとのWヒロインという設定になったのは、『Let It Go』以降だったという。 「(ジョン・ラセターと)最初に、本格的に意見交換したのは、『Let It Go』を書いた時だった。この曲を劇中で使えるかの確認をした時、彼はものすごく気に入ってくれていたんだ。エルサの人物像を表現したあの歌を聴いて、“エルサはこの作品の悪役ではない”と判断されたんだよ。実は、あの歌ができる以前までは、エルサは悪役だった。『Let It Go』の完成によって、コンプレックスと好意を持ち合わせた心で苦しんでいるキャラクターとして描かれるようになり、それ以降、『Let It Go』を中心にして最終的な映画の設定が出来上がっていったんだ」と、ロバートは説明した。 また、クリステンは「エルサは、自身の王国から逃げ去り、凍てつく山の上で、過去の自分を全て忘れなければならない。でも、ある意味ずっと心にためていたもの全てを解き放って自由になることでもあった。そこには解放と構築の二元性があり、その二元性が、この山の頂上で彼女のアートとなっているの。私たちが作ったこの歌が機能した途端に、突然、エルサはもう悪役でなくなったわ」。『Let It Go』が作られたことで、作品の方向性が大きく変わることとなった。 ■アナは2つの気持ちを持ち合わせたキャラクター 一方で、アナのキャラクター設定には、エルサ以上に時間がかかったという。エルサとは対象的に、希望にあふれて歌うキャラクターを作る必要があったが、それと同時に、アナも心の中にある小さな何かが変わっていくものにしなければいけなかった。そのアナの役どころを、決定づけたのは『For The Time in Forever』だった。 クリステンは「あの曲が出来るまでの道のりは大変だった。単に『私は希望に満ちあふれているわ!すべて最高!』や、『私は孤独よ、寂しいわ』というだけの歌なら簡単。でも、私たちはこの2つを合わせて、この両面を表現できる歌を作る術を見いだす必要があったの。それも“ミエミエ”にならないような形でね。そうやって生まれたのが『For The First Time in Forever』なの」と、制作当時を振り返る。