『エマニュエル』映画化になぜ挑戦したのか? オードレイ・ディヴァン監督が語る
2025年1月10日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかで全国公開される映画『エマニュエル』について、監督を務めたオードレイ・ディヴァンが語った。 【写真】オードレイ・ディヴァン監督が手がけた映画『あのこと』場面写真 エマニエル・アルサンによる同名小説を原作とし、1974年にジュスト・ジャカン監督×シルヴィア・クリステル主演で映画化された『エマニュエル夫人』は、日本では官能シーン満載であるにもかかわらず一般映画として公開され、大ヒットを記録。舞台を現代に変えた本作は、新たな作品として生まれ変わった。 監督を務めたのは、前作『あのこと』が、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、ルミエール賞作品賞を受賞し、英国アカデミー賞、セザール賞の監督賞にノミネートされたディヴァン。“真の快感”を追い求め、セレブが行き交う高級ホテルで人間の危険な欲望に果敢に向き合う強くももろいエマニュエルを『燃ゆる女の肖像』『TAR/ター』などに出演したノエミ・メルランが演じた。 前作の『あのこと』では、1960年代の中絶手術が禁止されていたフランスで、秘密裏に堕胎を行うため孤軍奮闘する少女の姿を描いたディヴァン監督。次なる作品に『エマニュエル』を選んだ理由について、「プロデューサーから、エマニエル・アルサンが書いた原作を渡され映画化を提案されました。私はそれまで1974年に発表された『エマニエル夫人』を観ておらず、観ようとしたことはあったものの冒頭15分で観賞をストップしてしまったんです。『これは私に向けた映画ではない』と感じたので。しかし原作を読んでみたら以外にも楽しめました。女性の一人称で書かれた作品で、ヒロインは対象というより主題なのですが、1974年の映画ではそのように描かれてはいません。私はエマニュエルに力を取り戻し、彼女を自身のストーリーの主題にしようと決めました」と語り、1974年の『エマニエル夫人』のリメイクではなく、新たなエマニュエルの物語を伝えるべく映画化を決断したと振り返った。 さらに「原作の冒頭のエロティシズムに関する長い議論に興味を引かれました。エロティシズムというのは、何を隠し、何を見せるか、ということです。1974年の映画は見せることを拡大しようとするものでした。しかし、インターネットが普及した現代では見ようと思えば全てを見ることができます。そういう時代でも、エロティシズムは物語の原動力になるのでしょうか? 私は隠されたものの方が面白いと感じたので、想像力を掻き立てるような緊張感を押し出そうと考えました」と独自のエロティシズムを追求したことも語っている。 『あのこと』では妊娠してしまった女性に迫る危機、さらには堕胎時の痛みまでも映像で描き出したディヴァン監督は、再び自身の監督作を体感型映画に昇華させている。「『あのこと』の上映後、多くの男性がやって来て、お腹や身体の痛みを訴えました。“痛み”を共有できるなら、“悦び”もきっと共有できるはずと信じています。今日では“快感”は資本主義的な意味で完全にパフォーマンスと結びついているように思います。真の悦びを感じたことがなく、それを求めて踏み出す女性のストーリーを描きたかったのです」と果敢に挑戦したことを明かしている。
リアルサウンド編集部