「日本最小のウシマンボウ」が発見されるも、想像以上にデカすぎる! 小さな個体が日本で見つからないワケ
おそらくウシマンボウは「あたたかい水温を好む」
マンボウやウシマンボウは、一般的に流通する魚に比べて漁獲量や研究者が少ないことから、成長段階における分布や繁殖・産卵など、詳しい生態がよくわかっていません。 そもそも、「マンボウ属」には現在3種いることがわかっていますが、見た目もよく似ているため、長らく「マンボウは1種類しかいない」という認識が広がっていました。つまり、生態の「違い」もあまり知られていなかったのです。 しかし、日本の海で漁獲される個体の大きさが違うことなどから、澤井さんは「マンボウとウシマンボウは好む水温が異なるのではないか」と分析しています。 「ウシマンボウの小型個体は日本より南の海域で見つかっているので、体が小さい頃は温暖な海域で暮らし、ある程度大きく成長してから日本に北上してくるのではないかと考えています。実際、日本で確認されているウシマンボウは、マンボウに比べて大きな個体が多い傾向にあります」 ちなみに、千葉県鴨川市沖で発見された全長2.7m、重さ2300kgのウシマンボウが「世界一重い硬骨魚」としてギネス世界記録に登録されたことがあります。その後、大西洋中央部に位置するポルトガル領のアゾレス諸島沖で発見された個体(2744kg)に記録を塗り替えられたものの、日本は巨大なウシマンボウが出現する地域なのです。 澤井さんによると、小笠原沖ではなぜかマンボウの明確な記録はなく、ウシマンボウしか見つかっていないといい、「これも好む水温の違いに関係しているかもしれない」と話しています。 今回の発見について、澤井さんは「どこでどんな大きさの個体が出現するのかを知ることは、謎の多いマンボウ属の生態を知るうえで非常に重要」と語ります。 「全長50cm以下の小型のウシマンボウはニュージーランド沖で見つかっていますが、より小さな個体が発見されれば、繁殖や産卵がどこで行われているかを知るヒントになります」 「マンボウ」は2015年に、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されましたが、「ウシマンボウ」はまだ評価がなされたことがありません。「生態や分布が詳しく理解できれば、適切な保護や管理にもつながっていく」と澤井さんは期待を込めます。