「日本最小のウシマンボウ」が発見されるも、想像以上にデカすぎる! 小さな個体が日本で見つからないワケ
小笠原のウシマンボウの「その後」
今回澤井さんに情報提供した東京都小笠原水産センターの筒井さんは、「漁協からの『これは何マンボウ?』という問い合わせがきっかけだった」と話します。 小笠原水産センターでは、漁業の支援のほか海洋資源の調査・研究を行っており、小笠原の水生生物を展示する「小さな水族館」も運営しています。普段から、地元の漁師や子どもたちから「展示用に」と釣った魚が持ち込まれたり、珍しい魚がとれると「新種なのでは?」という連絡があったりするそうです。 「マンボウ属に『マンボウ』以外の種がいること自体があまり知られていないと思うのですが、こうした問い合わせがあるように、小笠原の漁協には魚への知的好奇心が高い人が多いと感じています」(筒井さん) 筒井さんは問い合わせを受け、澤井さんが運営するサイト「マンボウなんでも博物館」などを参考に種類の見極めに挑戦。しかし、あまりに違いが微妙だったため難航し、直接本人に連絡したところ、今回の発見につながりました。澤井さんは「成長途中のマンボウ属の特徴を見分けるのは非常に難しく、最終的に筒井さんが撮影してくれていたウロコの拡大写真がウシマンボウである決め手となった」と振り返ります。 今回水揚げされたウシマンボウが行き着いた先は、地元の居酒屋でした。身は湯がいてサラダにしたり、ホルモンや腸は味噌焼きやポン酢和えにして振る舞われました。店には筒井さんも駆けつけ、生まれて初めてウシマンボウを食べたそうです。 「お肉は鳥のささみのような淡白な味わいで、腸ポン酢がコリコリと歯応えが良くおいしかったです。子どもたちにはホルモン味噌焼きが好評でした」
発見を支えた「小さな需要」
謎だらけなマンボウ類の研究が進みにくい背景のひとつとして、商業的な価値が低いことが挙げられます。つまり、食べたり、加工したりすることが少なく、「お金になりにくい」ことにあります。需要が高い魚であれば、世界中で漁獲されて資源が管理されたり、養殖のために生態を研究したりする動きも生まれます。 実際に、小笠原諸島では稀にマンボウ類が漁にかかっても、船に上げるには大きく、高値で売れる魚でもないため、海上でそのまま逃がすことがほとんどだそうです。しかし、今回水揚げされて記録に残ったのは、比較的「小さかった」ことももちろんですが、筒井さんは「島にマンボウ類を買ってくれそうなお店ができたこともひとつの理由ではないか」と話していました。 マンボウ類の身は傷みやすいこともあり、マンボウ料理が大流行する未来はなかなか想像できませんが、こうした「小さな需要」がきっかけとなって今回の発見につながっているとしたら、マンボウ類の生態解明につながるかすかな希望になるかもしれません。 澤井さんは自身のサイト「マンボウなんでも博物館」でマンボウに関する情報提供を呼びかけています。