ホンダの「ド迫力“ウィング”」の効果がスゴイ!? 日常でも“効果アリ”な「実効空力」ってホント? 進化したエアロパーツを試してみた
実効空力を“剛性”で体験?
次に、ホンダアクセス試乗会恒例の、一風変わった実験試乗コンテンツを紹介しましょう。今回はちょっとしたことで変化するクルマの“バランス”を感じるのが目的です。 「実効空力“感”コアバリュー車」と呼んでいるという異様な出で立ちの車両は、テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)の“実効空力”開発にあたって、ボディコントロール技術の研究のため、「フィット e:HEV Modulo X」をベースに週末に有志が集い半年ほどかけて製作したもの。 実効空力のありたい姿と、ボディ剛性がクルマにもたらす影響を体感できるようになっています。
お手本としたのは、今でも評価の高いメルセデス・ベンツ「Eクラス(W124型)」の、金庫のごとき走りです。 このW124型でテストコースを走って計測したところ、けっして基本の剛性が極端に高いわけではなく、弓のようにしなってから次にコーナーに行くときにシュッと驚くほど素早く回復するので、安心して次のコーナーに入っていけることが判明。 それを再現できるように取り組んでいるそうです。助手席にはW124型のシートをわざわざオークションで落として調達したという力の入れようです。 走り方は60km/h+αを上限に、ぶっ飛ばすのではなく、あくまで「感じる」ことを目的に、まずベストな状態で乗って感覚を掴んでおき、そこからバーを外して走りがどのように変わるかを試しました。 念のため、バーの有無で変化するのは剛性ですが、この車両を製作した狙いは、実効空力により変化する“感”を開発陣で共有するためです。 最初のベストな状態では、たしかにW124型を彷彿とさせるソリッドな乗り味で、一体感があり、タイヤがしっかり路面を捉える感覚がありました。 そこからまず、フロントの左右フレームの先端を連結するバーを外したところ、ステアリングを切ったときの応答遅れが生じ、接地感も薄れてソリッド感がなくなります。 筆者の次に運転した編集部員も、「昔のクルマみたいになった」と上手いこと表現していました。 このバーを外してもバンパービームがあるため、なくても大丈夫なのではと思うところですが、ところがどっこい、全然そうではありませんでした。 これが重要な役目をはたしていて、ないとニュルブルクリンクを満足に走れないことから、ホンダでは「ニュルバー」と呼んでいるそうです。 続いてフロントは戻して、フロントシート後方の上側と斜めに配された三角形のバーを外しました。すると操舵初期の応答遅れは解消したものの、前と後ろで位相ズレが生じ、動きにカドが出て、トータルとしては応答が遅れるようになってしまいました。 同じコーナーを曲がったときの舵角が増えた気もしました。平らなところはまだしも、アンジュレーション(うねり)のある路面では顕著です。 これは最初のベストな状態ではアタマから先に入力が伝わって、きれいに車体がしなっていたところ、途中でねじれて力を失い、後ろがついてこなくなって、4輪で曲がることができなくなり、予想以上に舵を切ってしまうことが要因として考えられるそうです。 走りの一体感やコントロール性を高めるには、フロントとリアでそれぞれ剛性を上げても、途中がしっかりしていないとダメだということがよくわかりました。 そんなわけで、今回も大いに楽しみながら学ぶことができました。毎度そうなのですが、とにかく“実効空力”は、たったこれだけでこんなに変わるのかということにあらためて目からウロコが落ちる思いです。 ホンダアクセスの味わい深い走りは、こうした他ではやらないようなことに取り組んでいるからこそ生まれてくることもよくわかりました。
岡本幸一郎