【解説】“最低賃金1500円”めぐり「払えない企業は駄目」「物事自体が矛盾している」経済界の異なる意見を読み解く
■「払えない企業は駄目」経済同友会・新浪代表幹事は最低賃金引き上げを早期に望む
今月27日に予定されている衆議院議員選挙の争点にもなっている、物価高対策や賃上げ。多くの政党が掲げているのが「最低賃金の引き上げ」だ。特に「1500円」という数字を明記している政党が目立つ。ただ、この1500円という額については、一部の中小企業経営者からは「製造もコストカットしながらやっているので、人件費については価格転嫁できないと、やっていけない」との本音も聞かれる。 【動画】櫻井翔キャスターが直撃!7党首討論 各党が掲げる「賃金を上げる秘策」とは? こうした中、「払えない企業は駄目」と厳しい声を上げたのが、企業経営者が個人として参加する経済団体である経済同友会の代表幹事・新浪剛史氏だ。 18日の会見では「(賃金の引き上げを)できない企業は退出する。しかし、それを払える企業に移る方が間違いなく人々の生活は上がる。払えない企業は駄目だ」と強く主張。数千件の企業が倒産していても、失業率が下がっていない、つまり賃上げできない企業が倒産しても、そこで働いていた従業員は高い賃金を払える企業に移ることができていることを論拠としている。新浪氏は「やるなら今しかない」として、早期の引き上げを望む考えを示した。
■“できる経営者”の元に人を集めるべき 日本経済成長のための中小企業強化を
実は、新浪氏の主張は、賃上げできない中小企業は倒産するべきだということではない。日本の労働者の7割が勤める中小企業こそが日本経済を支えるとも語っている。そのために、賃上げを行うことができる企業の“できる経営者”の元に人を集める「合従連衡」をするべきだという。今のままでは、こうした“できる経営者”は、やる気をそがれてしまい、中小企業は良くならず、地方創生は起こらないとしている。 そして、「人を大切にするということは、やはり最低賃金を上げることになる」と語り、最低賃金の引き上げによって、企業は目標を持って賃上げを行う努力をすることになり、その結果、人々はより高い水準の賃金で働くことができるという主張で、人々の生活水準の向上に主眼を置いたものであると捉えられる。 ただし、物価高に伴う原材料費やエネルギー代の高騰に加えて、賃上げにかかるコストも負担することになると、中小企業の経営努力だけでは厳しい部分もある。そのため、大企業が中小企業の価格転嫁を後押しする必要があると、新浪氏は強調している。