ドイツのサステナブルな街をめぐる① 2000年の歴史が息づく「マインツ」を歩く
ヨーロッパは各地に有名な歴史的名所がありますが、ドイツも例外ではありません。中世の統治者一族やはるか昔の帝国を物語る城などが数多くあり、メルヘンチックな木組みの家など、ドイツ史をおもちゃ箱に詰め込んだような歴史的建造物が密集しています。幾多の修復をへてきた建造物は、現代に伝わる文化遺産として訪れる人々を魅了します。環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2023で世界4位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、ドイツのサステナブルやSDGsをレポートします。今回の舞台はフランクフルト空港からほど近い、ドイツの玄関口・マインツ。周辺の小さな街も訪ねます。
さまざまな様式が混在したドイツを代表する大聖堂
フランクフルトから電車で約40分、ライン川とマイン川の合流地点に位置するマインツ。古くから重要な交易拠点であり、8世紀には「ドイツ人の使徒」と呼ばれるボニファティウスが司教に就任したこともあって、同国でもっとも重要な宗教都市として栄えた。その名残りはカトリック教徒の祝祭「ファスナハト(カーニバル)」の開催地であることからもうかがえる。日本での知名度は高くないが、大聖堂に博物館、そして木組みの家並みまで、魅力がコンパクトに詰まっており、徒歩で楽しめるのも魅力だ。
ドイツの街並みは、「絵本のような」と形容されることが多い。その理由のひとつが「木組みの家」の存在。木材で家の骨格をつくり、粘土層の土や木板などでその隙間を埋めた壁からなる、中世以来の伝統的建造物だ。見た目がかわいいのはもちろん、天然素材をつかっているのもポイント。土壁は日本の漆喰壁と同じく、呼吸するように湿度を調整し、快適な居住空間をつくり出す。サステナブルな観点からも注目される建築様式なのだ。木組みの家はドイツ各地にあるが、その多くは戦火を逃れた歴史的建造物として、大切に保全されている。
「ドイツ三大大聖堂」に数えられるマインツ大聖堂。正式名称はザンクト・マルティン大聖堂で、巨大な赤砂岩の大聖堂は何世紀にもわたって拡張されてきた。6 本の塔がそびえ、最も高い塔は80mの高さまで空に向かって伸びる。建設から1000年が経過したいまもなお、圧倒的な力強さと荘厳さを誇っている。長い年月の間に修復が繰り返され、主体のロマネスク様式の構造に加え、ゴシック様式の礼拝堂と鐘楼、バロック様式の屋根など、時代ごとに追加された建築様式が見られるのもいい。