「40代の地方生活」「地元でプチ移住」 泊まって分かる田舎暮らしのリアル
近年、都会から地方への移住希望者が増加している。各種統計によれば、「田舎暮らし」を志向するトレンドは、従来の中心だったリタイア世代のみならず、20~30代の若者世代にも広がりつつあるようだ。これを民族の大移動の前兆と言うとかなり大げさかも知れないが、受け入れる「田舎」の側から見れば、最大にして数少ない地域活性化のチャンスなのは間違いない。今、都会人の「夢」を「現実」にするハードルを少しでも下げようと、自治体などが各地で盛んに移住セミナーや現地見学会を開いている。 「田舎暮らし」の断片(2)発想の転換が「八ヶ岳山麓で趣味三昧」実現 移住希望地No.1の長野県に住む筆者の周りでも、さまざまな取り組みを見聞きする。そんな中、軽井沢エリアにこの春、目に見える形で移住希望者に「田舎暮らし」をアピールする施設が出現した。一見、小規模な住宅展示場のように見えるが、そこに並ぶ家は、薪ストーブの煙突があったり、ログハウス風であったりと、移住希望者が好みそうなスタイルを網羅している。それぞれ宿泊することが可能で、将来の移住を念頭に、レジャーを兼ねてリアルな田舎暮らしを体験できる施設だという。『class vesso』=「暮らす別荘」と銘打った、新たな田舎暮らしの最前線を取材した。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)
「暮らす別荘」とは?
筆者の実家は、軽井沢町の西隣、長野県北佐久郡御代田(みよた)町の浅間山麓にある。実家があると言っても「地元」ではない。そこで暮らす間もなく80歳になる母、そして八ヶ岳を挟んだ蓼科高原に住む僕自身も、東京からの移住者だ。母は父と2人で10年ほど前に移住、僕は行ったり来たりするいわゆる「週末移住」を経て、5年前に蓼科に住民票を移した。移住後に父が亡くなり、一人暮らしになった母の様子を見ることが、同じ長野県内に移った理由の一つだ。だから、蓼科と御代田を結ぶ約1時間半の道のりをしょっちゅう車で走っている。『class vesso』は、その沿道の御代田町の中心部近くに、今年の春先に出現した。気になってホームページをあたると、今年の夏から本格的な宿泊受け入れが始まるとのこと。お盆の時期を見計らって見学と取材を申し込んだ。 「田舎暮らし」には、大別して2種類のイメージがあると思う。田園地帯や郊外住宅地的な既存の地元の人たちの暮らしの中に入っていく場合と、移住者が集まる山や海の別荘地などに定住するケースだ。もちろん、このようにデジタルに二分できない田舎暮らしのパターンも多くあるだろうが、僕は完全に後者だ。車がないとコンビニにも行けないような山の別荘地にある斜面にへばりつく家で、「田舎暮らし」というよりは「山暮らし」を実践している。一方、御代田町の実家はゴルフ場や畑に囲まれた静かな集落にある。近隣住民の多くは都会からの移住者で、週末にのみ訪れる別荘族も混じる。