【全日本大学駅伝】初優勝の國學院大・MVP山本歩夢、苦しい時期にかけられた平林清澄からの言葉「ずっと待ってるから」
苦しい時期も「歩夢と優勝したい」の言葉を支えに
MVPを獲得した山本は、これが学生3大駅伝では初となる区間賞だった。1つ、形になるもので結果が出たことへの感想をたずねると「区間賞は素直にうれしいです」と言いつつも「この区間賞はみんながくれた区間賞だと思います」という。「本来はエース区間で走るべきだし、去年の2区のリベンジをしたかったんですが、みんなが強すぎてつなぎの区間に回りました。出雲駅伝では『みんなが優勝させてくれた』という感じだったんですが、今回区間賞をとれて自信になりました」と晴れやかな表情で話した。 山本は前田監督に「4年生になった時に箱根駅伝総合優勝しよう」と勧誘されて入学。同級生の平林とは2人で1年時から「優勝しよう」とずっと言い続けてここまできた。1年時の箱根駅伝3区で大学駅伝デビューし、エース区間を任されるなど主力として走ってきたが、3年時はけがに苦しんだ。 昨年8月に左足のシンスプリントを発症し、急ピッチで駅伝シーズンに間に合わせたが、出雲駅伝4区区間5位、全日本大学駅伝では2区区間11位と本来の走りができず。11月には右の大腿骨(だいたいこつ)を骨折してしまい、箱根駅伝への出場はかなわなかった。その間、平林は今年2月の大阪マラソンで学生最高記録を更新して優勝するなど活躍を続け、「学生最強ランナー」と呼ばれるようになった。 最高の仲間でありライバルとお互いが認める山本と平林。大学1年から結果を出し続けている平林の活躍に「また差を広げられているな」と感じることもあり、苦しさも感じた。しかし平林の「ずっと待ってるから」「歩夢と優勝したい」との言葉が山本の力になった。 今年も関東インカレが終わった後に故障をし、コロナへの感染もあり、ホクレン・ディスタンスチャレンジに出場することができなかった。夏合宿でも8月末の2次合宿終了後にようやくAチームに合流できた状態で、なんとか練習にくらいつき、出雲駅伝のメンバー入りを勝ち取った。 しかし出雲駅伝に向けてのスピード練習で、1km2分47~8秒で押していくのはきついと感じてしまった。出雲では2区で区間5位。「耐える走りになってしまうだろうと思ったんですけど、(トップの)青学が見えるところで辻原に渡せればと思ってました。自分たちの強みはやっぱりつなぎ区間で、つなぎ区間がしっかり区間賞を取ってくれたのが優勝につながったので。今回は自分がその役割をできたので良かったなと思います」 昨年2区でブレーキをしてしまったという思いもあり、全日本にかける思いは強かった。去年走った時は、走っている最中に差し込みが来て、我慢していたが、ラスト1kmほどで「とてつもない痛み」になってしまい、苦しい結果となった。今回も走り出して差し込みが来た時に、その時のことを思い出してしまったという。しかし痛みが出た箇所を自分で揉(も)んで、痛みを散らすようにして走り切った。 出雲駅伝が終わってから練習をしていく上で、1km2分52~3秒ならずっと押していけるなと感覚をつかんでいた。10日前にきつい練習をしてもいい走りができ、前田監督からも「区間賞は全然いけると思う」と言われていた。「でも正直、タイムとか区間賞というよりも、(前を行く)青学さんのことしか考えてなかったので」。それが結果として最高の形となって現れた。