デンソーが地域の自動車部品メーカーにおけるデジタル化を支援…独自の人材育成プログラムを活用
デンソーの受講生がタケダの作業現場に出向いて完成させた「nippo」
デンソーは9月4日、地域企業向けに業務のDXを進めるための教育プログラムとして開発した「DENSO Cloud & Agile Dojo(デンソー クラウド アンド アジャイル ドウジョウ)」の活用事例を紹介する説明会を、自動車部品を製造するタケダ本社(愛知県刈谷市)で開催した。 ◆「DENSO Cloud & Agile Dojo」とは? 「DENSO Cloud & Agile Dojo」は、デンソーの新横浜イノベーションラボ(デジタルイノベーション室)がクラウド・Webサービスを内製で開発する組織を目指して2017年に立ち上げた。その後、組織拡大と開発プロジェクトの増加に伴い、課題となっていたソフトウェアの人材育成を目的とするこのプログラムへと2021年に発展させている。 ソフトウェア人材強化のためのリスキリングと中小企業のDX推進のニーズが成立 このプログラムでは、デジタルイノベーション室が開発の実践を通じて培ったノウハウを、短期間で習得できることが特徴となっている。このうち、ソフトウェア開発未経験者に提供されているのが、2ヶ月間にわたって業務時間内に集中的にクラウド、Webサービス・アジャイル開発の実践的な基礎を学ぶ「ブートキャンプコース」だ。 受講生はデンソーの社内やグループ会社の様々な部署から募ってチームを結成し、座学や実際の開発経験を経てWebサービスをチームで開発できるレベルにまで育成していく。このプログラムはすでに5期を迎え、これまでに多くの“卒業生”を輩出している。そうした人材を活かすべく、専門知識を必要とする地域企業と、専門知識を持つ民間人材のマッチングを仲介するのが「愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点」である。 「プロボノ」により、多様な“プロ人材”が無償でリスクや負担を抑えて活用できる この事業そのものは内閣府が進める「自分の専門知識や経験を生かした社会貢献活動」の一環として取り組まれているもので、大企業や都市部にいる専門知識や経験を持つ“プロ人材”と、課題を抱える地域企業をマッチングさせるべく、その仲介を担うのが役割だ。その組織は全国46拠点あり、2015年10月~23年7月末までの累計で9万2000件を超える相談があり、うち2万2000件以上が成約に至っているという。 ポイントはこの活動を無償でリスクや負担を抑えられる「プロボノ」の活用として定義していることにある。プロボノとは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とし、「社会的・公共的な目的のために職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動」を意味する。つまり、課題を抱えていた地域企業にとっては、経験が豊富な大企業からノウハウや知見を獲得して課題解決につなげ、業務の効率改善につなげられるのがメリットとなる。 ◆地域企業のデジタル化を阻む高いハードル このプログラムが立ち上げられた背景には、様々な企業内に生じている「デジタル人材がいない」ことへの課題があった。作業現場ではこれを改善しようとの思いがあっても、実際は既存システムの保守で精一杯となり、新たな取り組みをしようにも着手は難しい。仮に着手できたとしても、社内人材の再教育(リスキリング)の方法がわからないというのが中小企業でDX化が進まない大きな要因となっていた。 そんな中でデンソーは、これまでもリスキリングを通して「IT内製化」を実現する体制づくりにいち早く取り組んで成果を挙げてきた。その具体的な成果が「DENSO Cloud & Agile Dojo」なのだ。ここではクラウド活用やWebサービス開発の実践的なスキルを、開発未経験者を含めた全社員に身につけさせる。そして、それを実際のクラウドやWebサービスの開発を通じ、実践的な技術の習得や顧客のニーズから開発を進める経験を踏まえることでリスキリングの結果を出していくというわけだ。 では、今回の事例でどんな取り組みが実施されたのか。 その目的は言うまでもなく、タケダにおける作業記録を紙に記録していたアナログ的な業務を、デンソーのノウハウを活用してデジタル化へ転換することにある。
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レスポンス 会田肇