国内初の「オンライン国勢調査」は成功するか? 1000万世帯回答の根拠とは
本当に1000万世帯がオンラインで回答してくれるのか?
しかし、どれだけパソコンやスマートフォンが普及したとはいえ、本当に調査対象の2割にあたる1000万世帯が回答してくれるのでしょうか? なぜそんな見通しが出てくるのでしょうか? 総務省統計局国勢統計課によると、紙による調査よりも、オンライン調査を先に行うことを「先行方式」と呼んでいます。ほかにも紙による調査とオンライン調査を並行して行う方法もあり、こちらは「並行方式」と呼ばれています。 前回2010年の国勢調査では、東京都内の630万世帯を対象に限定的にオンライン調査が行われました。このときは「並行方式」で行われ、スマートフォンに対応していなかったこともあり、回答率は8.3%(約53万世帯)でした。「東京都限定の実施のため、広報を前面に出さなかった」(同課)こともあり、この結果だけをみると、大して回答率は高くないのですが、この国勢調査のあと、総務省では3回の試験調査を実施しています。 2012年の1次試験調査では、7府県7市町の約8000世帯について「並行方式」で、別の7府県7市町の約8000世帯について「先行方式」で回答率がどう変わるかを見ています。この時、並行方式では回答率が6.5%だったものの、先行方式では25.3%と大きな違いが出ています。 これを受けて、2013年には、7都府県14市町の8400世帯を対象に「先行方式」で2次試験調査が行われました。回答率は23.3%で、1次試験調査と変わりない結果が出ています。さらに、2014年には、47都道府県の県庁所在地など52市区で3次試験調査を実施。調査対象が都市部中心だったこともあり、回答率は34.0%にのぼっています。
試験調査の結果からは、明らかに「先行方式」の方が「並行方式」よりも回答率が高くなることが分かったわけです。試験調査に協力した回答者の9割は「オンライン調査の方が楽で、次も使いたい」という継続利用意向を持っており、20代の回答者の約5割がスマートフォンから回答していたということです。 また、オンライン調査の回答期間が10日から20日にかけて行われることにも理由があります。調査結果から「夜間と週末に回答数が多くなる傾向がある」ためで、2回の週末を挟むことで回答率の向上を図る狙いがあります。世界に目を向けてみると、先行して同様の人口調査をオンラインで行っている韓国やカナダの場合は、回答率が50%にのぼっており、いずれの国も「先行方式」を採用しています。 このような調査を経て、日本で初めてのオンライン国勢調査は「先行方式」で行われることが決まり、20%から30%の回答率が期待されているというわけです。 統計調査については、「電子政府構築計画」の文脈からオンライン化の方針が打ち出されており、調査対象者の負担の軽減や統計の精度向上を実現するため、5年後の国勢調査もオンライン調査が継続される見通しです。
オンライン調査にかかる費用は?
今回の国勢調査にかかる国の予算は650億円で、前回2010年の約644億円とあまり変わっていません。オンライン調査の開発にかかった費用は20億円で、総額のなかに織り込まれている形です。その20億円のうち、「多くはハッキング防止やウイルス対策などのセキュリティー対応にかかる費用」(同課)で、サーバーは24時間監視されることになっています。