植物と過ごす幸せ いつまでも〈花も人ものびやかな庭〉3月
長野県須坂市、ブドウやリンゴの畑に囲まれた美しいナチュラルガーデン。建築の設計やインテリアデザインを手がけていた田口勇さんと片岡邦子さんが東京から移住し、24年前につくり始めました。園芸ファンに愛されるショップガーデンの、センスあふれる庭づくりの秘けつ、美しい庭を続けていくためのコツをお二人から学んできた『趣味の園芸』連載「長野 ガーデンソイルの四季 花も人ものびやかな庭」。 ■ 3月号掲載の最終回より、一部抜粋
3月は日ざしがだんだんと強くなり、根雪が解け、あちらこちらでクリスマスローズや小球根が開花。ガーデンを包む空気が和らいできます。 【上の写真】庭をつくり始めた当初、列植したブナ20本ほどとクリスマスローズ。落葉樹の下は冬から春は日当たりがよく、夏は半日陰になり、居心地のよいクリスマスローズはこぼれダネでふえて群生地のよう。ピンク系濃淡のシングルが最もふえるので、バランスをとって白やグリーンは補植している。
花も木々も歌い上げる季節の始まり
昨年4月、春爛漫の中で始まったこの連載。今年も春が巡ってきます。 片岡さんは毎年、ガーデニング・シーズンの始まりに「植物たちは昨年のように元気に育ってくれるかしら? 新たに植栽したエリアはどうなるかしら?」と、少し不安にかられるそうです。それでも、春の花木が咲き始めれば、庭の空気が一気に華やいで明るく輝きます。小さな球根の花たちが地面から顔をのぞかせると、土の温かさと力強さを感じるのだとか。四半世紀育んでいる庭でなお、自然や植物への畏敬の念をもち続ける姿勢に触れて胸が熱くなります。 この庭は、植物の力を借りてお二人が美しいと感じる空間をつくりたい、という思いで始まりました。 「その気持ちが庭を訪れてくださる方々にも伝わり、植物たちがここで醸し出すハーモニーを一緒に楽しんでいただけたらと願っています」という片岡さん。 「1年の連載を通して、各月の庭を読者のみなさんと同じ目線で見ることができたのは貴重な体験でした。これからの庭づくりに役立てたいです」と、田口さんはいいます。 お二人は「体力の続くかぎり、庭づくりはいつも進行形でありたい」と、時を重ねてなお変わらぬ想いを語ります。のびやかな庭はどこまでものびやかに、四季を織りなしていきます。 GARDEN SOIL ガーデンソイル 長野県須坂市にあるナチュラルガーデン・ガーデニングショップ。植物や雑貨の販売、カフェも併設。 ●『趣味の園芸』連載「長野 ガーデンソイルの四季 花も人ものびやかな庭」最終回 より