日本でも多発するバイク事故、バルセロナはスタートアップと共に解決へ乗り出す
一方、シンガポールを拠点とするスタートアップ「ライダードーム」は、コンピュータービジョンとAIを活用したバイク運転者支援システムを提供している。システムはバックミラーに取り付けたライトと連動していて、バイクに危険が迫るとライトを光らせ、バイクを運転する人にリアルタイムで警告するようになっている。
一般的にバイク事故が起きる原因は、スピードの出し過ぎや無理のある追い越しによる衝突。また車体が小さいことで車の死角に入りやすく巻き込み事故も多い。さらにはバイクに乗る際はヘルメットをつけていることから視界が狭くなり、周囲の安全確認が不十分で事故となるケースもある。 ライダードームのシステムが事故のリスクが高まった際に警告をすることで、バイクの運転手は減速したり、安全確認を行うことができ、事故を回避するための対応が取れるようになる。さらにこのシステムでは、データがリアルタイムでクラウドにアップロードされる。そのため運転手がどの道を走行中に警告を受け取ったのか振り返ることができ、次回以降の運転時のリスク予測に役立てられるのだ。またマピット同様に、バルセロナ市もデータを受け取り、危険地点を把握し、予防措置を講じることができる。 ライダードームのCEOヨアブ・エルグリチ氏は取材に対して、バルセロナでの実証実験は順調に進んでいると回答。その上で、「自動車のADAS(先進運転支援システム)はスタンダードになりつつあるが、バイクに対してはまだまだ進んでいない。今が変革の時だと考えている」と答え、製品を通じて事故を減らしたいとコメントした。 ヨアブ氏のコメント通り、車には車間距離を保つ機能や歩行者などを検知したり、前方後方の衝突を警告するなど、ドライバーに代わって車を制御し運転支援する機能が一般的になっている。反面、バイクでは活用が進んでいるとは言い難い。 ここで強調したいのが、国土交通省が自動車に搭載されるADASなどが事故削減に効果があるとする報告書を発表していることだ。その報告書によるとADASが装備された自動車同士の事故であれば、事故の約7割が削減可能で、自動運転であれば約9割の死傷事故が削減できるという。さらに、事故を発生させた当事者の自動車にADASが装備されていれば死傷事故の約6割、自動運転がついていれば9割弱が削減可能だとも記されている。 バイクは車よりも交通事故で大怪我をしたり、命を落とす可能性が高いことから、メーカーは二輪車用先進運転支援システム(ARAS)を導入する傾向にある。普及までの道のりはやや長そうに見えるが、マピットやライダードームなどの普及で命を落とすことが少しでも減らせるよう、自治体も企業も模索し続けている。
文:星谷なな /編集:岡徳之(Livit)