日本でも多発するバイク事故、バルセロナはスタートアップと共に解決へ乗り出す
バルセロナ市は企業と協働し事故削減へ
スペイン第二の都市、バルセロナもバイク事故が多い都市である。 欧州の非営利コンソーシアム「EuroRAP」の分析によると、2020年から2022年の3年間で、カタルーニャ州全体の死亡または重傷事故にバイクが関与した割合は全体の44%だったという。死亡事故だけでは全体の30%に関与している。このデータにはバイクが歩行者を轢いて怪我をさせた事故なども含まれているという。ただ州内でバイクなどの移動量は全体のわずか2%ほどしかなく、それにも関わらず事故の比率が高いことに行政は頭を悩ませている。 またバルセロナ市だけに絞るとバイクと原付バイクの交通量は全体の約30%と高くなる。そのため2022年、交通事故での死者数のうちバイクを運転していたのは全体の70%だった。また事故で重傷を負ったのは80%以上にのぼるという。 バイクは機動力が高く、公道走行時も駐車時もスペースが小さく済む。そのため電動バイクなどは車よりもエネルギー消費が少ないため、バルセロナ市は都市内移動において利便性が高い乗り物であると考えているという。しかしバイク関連事故が頻繁に起こっているとして交通安全上の課題の一つとなっている。 そこでバルセロナ市は財団などと共同で、バイク事故減少のためのソリューションを見つけるチャレンジコンテストを実施。20カ国から約50のソリューションの応募があった中から、スタートアップ2社が選ばれた。 コンテストで優勝したカタルーニャ州の企業「マピット」のバイク監視システム。そして2位に選ばれたシンガポールの「ライダードーム」の人工知能(AI)を活用した運転支援システムだ。現在2社はパイロットテストを実施していて、効果測定などを行っている。
まずカタルーニャの企業「マピット」は、バイクにGPSが付いたセンサーを取り付けることで、運転スタイルやバイクの状態、環境を分析し、事故削減を目指していく。 例えば、バイクに乗る前にマピットのアプリを通じて、バイクを運転する人に運転時の推奨事項を提示。さらにバイクの走行距離をシステムがモニタリングしているので、点検が必要な時期になると通知する仕組みになっている。点検の予約もアプリからできるそうだ。このほかにも、自分の現在地は共有を許可した人であればリアルタイムで閲覧させることが可能で、走行中にメッセージアプリなどで自身の居場所を伝えるなどの危険行為を減らせる。 また走行データは自治体も活用する。ユーザーの名前は匿名にした上で、バルセロナ市に送られ、市はバイクが事故に遭いそうな可能性が高い場所と時間を把握し、安全対策に必要な措置を講じられるのだ。 マピットはバルセロナではすでに約1万7,000台のバイクで利用されている。スペインでも高いシェアを誇る日本の「ホンダ」のバイクにも搭載されていて、取り組みが迅速に進んでいく期待感がある。