日本人は遺伝子的に牛乳が合わない!?「お腹がゴロゴロしない」次世代牛乳A2ミルクがやっと日本でも
販売されているほとんどの牛乳は、A1型のβカゼインを含む。しかも日本人は、遺伝子的に乳糖不耐症が起こりやすいと、庫本教授は話す。 「お腹がゆるくなるのは、乳糖だけが原因ではなく、冷たい牛乳を一気に飲む、食べ合わせが悪いなど、他の要因も考えられます。 しかしながら、一般的に日本人を含めたアジア系の人種の多くが、遺伝子的に乳糖を分解できないことがわかっています。遺伝子だけで判断するならば、ほとんどの日本人が乳糖不耐症予備軍といってもいいでしょう。A1型に比べて消化不良が起こりにくいA2ミルクは、乳糖不耐症などのお腹の症状を緩和させることが期待されています」 ◆通常の牛乳は、大きなタンクにA1・A2が混ざった状態 1ℓ200円前後で買える通常の牛乳に比べ、A2ミルクの値段は300~500円程度とやや高い。その理由は、販売に至るまでさまざまな高いハードルをクリアする必要があるからだ。 「通常の牛乳をつくっている牧場では、A1の牛、A1A2の牛、A2の牛が一緒に飼育され、搾った生乳は大きなタンクに集められます。そのためA1型とA2型のミルクが混ざった状態になります。 100%のA2ミルクをつくるためには、まず牧場のすべての牛の遺伝子を調べ、そのうちA2の遺伝子を持った牛だけを分けて飼育する必要があります。さらに搾った生乳にA1型が混ざってはいけないので、タンクはもちろん、殺菌や充填といった商品に至るまでの工程も分けて製造することになります」 このように酪農家にとって苦労がある一方で、A2牛だけを分けて飼育するという点で、飼料や飼育方法を独自に工夫できるメリットがあり、それが味のおいしさや品質向上にもつながっているという。 「例えば、遺伝子組み換え作物の飼料を使わない、牛乳の検査を徹底しているといった牧場もあり、それらがこれまでの牛乳とは違った付加価値になっています。このようにこだわりをもってつくられたA2ミルクは、特別感のある“プレミアム牛乳”といえます」 また、牛乳でお腹を壊しやすい人や、お腹の弱い子どもに飲ませたい人にとっては、本当にA1型の牛乳が混ざっていないかどうかも気がかりなところ。庫本教授は、重井医学研究所(岡山市)と共同で生乳から簡単にA1型・A2型を特定できる検査キットを開発し、一部のA2ミルクの製造工程で取り入れられているという。