ウクライナ特使団、韓国・尹錫悦大統領との面会時に武器支援を要請…トランプ次期政権や国内世論を無視できず苦慮
【ソウル=依田和彩】韓国紙・東亜日報は28日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が派遣した特使団がソウルで27日に尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と面会した際、武器支援を要請したと報じた。
北朝鮮のロシア派兵を韓国への脅威とみなす尹政権は武器支援を検討しつつも、決断にあたってはトランプ米次期政権や国内世論の動向を無視できない。
同紙によると韓国大統領府は、特使団の訪韓に先立ち、地対空ミサイルなどの防空兵器や155ミリ砲弾などの保有量と運用状況について韓国軍から報告を受けたという。韓国政府はこれまでウクライナに対して防弾チョッキなどの供与にとどめ、砲弾も米国を迂回(うかい)して提供している。露朝の軍事協力に応じて段階的な措置を実行する構えで、大統領府関係者は10月22日、「(北朝鮮兵の関与が)限度を超えれば攻撃用も考慮できる」とした。
武器を直接支援するためには、戦略物資を輸出する際に「平和的目的での使用」「国際平和と安全維持、国家安保に影響を及ぼさない」といった条件を定める韓国の「対外貿易法」や「防衛事業法」をクリアする必要がある。ここで野党の反対や世論が壁となる。国会(定数300)で170議席を占める左派系最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表は11月1日、「なぜ大統領が国民の意思に反して殺傷兵器を支援し、戦争に介入するのか」と批判した。
韓国ギャラップが10月25日に公開した世論調査で、ウクライナに「武器など軍事的支援が必要」と答えた人は13%にとどまった。武器支援を行えば、ロシアの北朝鮮に対する軍事支援が強化されて韓国の安全が脅かされるとの見方が背景にある。
早期停戦をにらむトランプ政権の発足前に決断すべきでないとの声もある。韓国大統領府が27日の尹氏とウクライナ特使団との面会について発表した際は「米国と緊密に意思疎通しながら協力を進めることで一致した」とし、米国の意向を踏まえて判断する姿勢を示した。