引き渡し直前に解体決定…『積水ハウス』が土壇場で住民の声を無視できなくなった裏事情
毎年夏は、マンションの竣工が最も多い竣工ラッシュシーズンである。一般的にコンクリートなどの建材が気候による影響を受けにくいため、多くの現場が春先に着工するのだ。そんななか東京都国立市では、7月に引き渡し予定だった高級マンション『グランドメゾン国立富士見通り』に異例の事態が起きている。 【画像】すごい…!解体工事がはじまった問題の高級マンション 着工前より近隣住民からは「“富士見通り”という名前の場所なのに富士山が見えなくなる」「日当たりや電波障害の問題が起きる」などの声があがっていたという。住民の声を受け、当初11階建てだった計画を10階建てにするなどの変更が行われたが、近隣住民とのわだかまりは解消できておらず、最終的に購入者の手に渡ることなく、『積水ハウス』はマンションの解体を決定した。 「本当に珍しいケースです。今回の事業主は大手の『積水ハウス』ですから、東京都の条例で定められている事前の住民説明会や署名を集めるなどの手順は行われていたはずですが、地元住民との交渉の詰めが甘かった。一部報道では『積水ハウス』の見解として、工事完了届を出した後に〈『積水ハウス』幹部や他部署が確認したところ、進めるべきではないという判断になった〉とのことでしたが、マンション事業部に責任を押し付ける発言に聞こえます。普通、幹部の承認なしで一事業部の決定で着工することはありませんし、問題がありそうなら建物が建ってしまう前に視察を行うべきでしょう」(大手ゼネコン関係者) 「唯一救いなのは、事業主の『積水ハウス』が言及されているという点くらいですかね。『積水ハウス』のような大手デベロッパーは、設計者に責任を転嫁させることも多いですから。設計の知識のないデベロッパーがコンセプトだけを設計士に伝えて、実際に階数や外観デザインを決めるのは設計士ということも多いのです」(同前) 法令違反や構造上の問題がないのであれば工事を押しすすめることはできるものの、『積水ハウス』のような事業主は近隣住民の声を最優先せざるを得ないという。 「不動産界隈は、とにかく評判が命。住民トラブルが起きているマンションは、購入後にトラブルが頻発する可能性が高い。訴訟に発展するリスクを抱えているため、買いたがる人が減って資産価値が落ちてしまいます」(大手不動産会社関係者) 「また、事業主が抱える別の案件にも支障が出ます。今回のような騒動を起こしてしまった事業主は購入者たちに『事前トラブルをおさめる力がない』と思われてしまうためです。今回解体が決まったのは『グランドメゾン』シリーズの中の1物件。Web広告には人気歌手の星野源(43)を起用し、『積水ハウス』は看板マンションブランドとして力を入れています。価格帯をみるに、いわゆる“億ション”ですね。しかし、今回の件で『グランドメゾン』というブランド全体に傷がついてしまった。新たに『グランドメゾン』シリーズのマンションが建設・分譲される際、購入を検討する人が事前に調べものをする中で、今回の一件を知ることになる。トラブルを起こしたことのある事業者のマンション購入に二の足を踏むのは当然だと思います」(同前) そもそも国立市の都市景観形成条例等で今回のエリアに富士山が見えなくならないような建築制限を設けていれば防げていた話だが、今回は着工許可を出した行政を飛び越え、事業主と近隣住民、さらには国立市民全体をまきこんだ紛争となってしまった。購入者への補償、さらには解体後に残る『積水ハウス』が買い取ったいわくつきの土地の行方はいかに。
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