“赤い彗星”対“上州のタイガー軍団”。異なるカラーで勝負する伝統校同士の一戦、命運を握るのはサイドアタッカーの出来【選手権・準決勝展望】
12時5分にキックオフ
1月4日に高校サッカー選手権の準々決勝が行なわれ、国立のピッチに立つ4チームが出揃った。11日の準決勝・第1試合で対峙するのは、東福岡と前橋育英だ。 【動画】東福岡と前橋育英、準々決勝の戦いぶりは? 東福岡はU-18高円宮杯プレミアリーグWEST、前橋育英は同EAST。2種年代最高峰のリーグで技を磨くチーム同士の対決となるが、カラーは全く異なる。 “赤い彗星”の異名を持つ東福岡はサイドアタックが伝統。しかし、今回のチームは粘り強い守備が武器。今季から指揮を執るOBの平岡道浩監督が自身の指導におけるカラーを聞かれた際、「守りの部分」と言い切ったように強固なディフェンスが今大会の躍進を支えてきた。 春先はまだ守備は不安定だったが、プレミアリーグで経験値を積んでプレー強度がアップ。6月のインターハイ予選準決勝で敗れた後、基本に立ち返った点も大きい。戦う姿勢を全面に押し出せるようになり、ゴールを隠す守備で簡単に失点しなくなった。 手足の長さを活かしたセーブで魅せる191センチのGK後藤洸太(3年)、CBでコンビを組む185センチの大坪聖央(3年)と180センチの山禄涼平(3年)は安定感が抜群。キャプテンの左SB柴田陽仁(3年)、右SB福川聖人(3年)も堅実さと運動量を兼備しており、対人プレーも得意とする。 県予選を含め、ここまで7戦零封中の守備陣の強固さは半端ない。また、PK戦も得意としており、今大会も尚志との初戦と静岡学園との準々決勝はスコアレスで終えながらも勝利を重ねてきた。 だからこそ、攻撃陣の奮起が求められる。4試合で計3ゴールと得点力に物足りなさを残している。しかし、ツボにハマった時のショートカウンターは鋭い。好不調の波が激しい点は玉にキズだが、左の神渡寿一(3年)、右の稗田幹男(3年)がサイドから仕掛けてどれだけチャンスを作り出せるかがキーになる。 一方の前橋育英は持ち前の攻撃的なスタイルで勝負する。上州のタイガー軍団は春先からチーム作りに苦労し、特に最終ラインのメンバーが固まらずに苦戦を強いられた。インターハイも2015年度以来となる予選敗退を喫したが、その後に復活。レギュラーが固定され、久保遥夢(2年)と鈴木陽(3年)のCBコンビが中心にディフェンスが整備された。 すると、攻撃陣も力を発揮できるようになり、10月のプレミアリーグEASTで3連勝。一気に波に乗ると、直後の選手権予選も勝ち上がり、同リーグでトップスコアラーに輝いたFWオノノジュ慶吏(3年)を中心に得点力もアップした。 キャプテンのMF石井陽(3年)を軸に丁寧なビルドアップとショートパス主体で攻め込み、左のMF平林尊琉(3年)、右のMF黒沢佑晟(3年)が個人技で局面を切り開くスタイルは破壊力がある。今大会も彼らがチャンスを作り出し、4得点のオノノジュを筆頭にゴールを重ねてきた。 もっとも、守備陣はまだ粗さがあり、2、3回戦は2-0から追いつかれている。「(2-0で勝利した米子北戦も含めて)今までの3試合はゲームを支配できず、ちょっと苦労してきた」と山田耕介監督が苦笑いを浮かべたように、リード後の試合運びに課題を残す。それでもきっちり修正してきたあたりは、さすがの一言。堀越との準々決勝では虎の子の1点を守り抜き、最後は4バックから5バックに移行して逃げ切った。 互いに異なる特長を持つなかで、勝負を分けるポイントはサイドアタッカーの出来だろう。東福岡はボールを奪った後にいかに中盤からサイドに繋ぎ、両翼が局面を打開できるか。前橋育英はボール支配率を高めつつ、サイドでいかに1on1の状態を作って突破を図れるか。 長年、高校サッカー界を牽引してきた両雄の戦いは12時5分にキックオフを迎える。ファイナルの舞台にたどり着くのは――。伝統校同士の戦いから目が離せない。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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