1本100円のホルモン注射 胸を「もっと大きくしたい」相談すると… カルーセル麻紀81歳、差別や偏見と“闘い”の人生
■未成年がばれぬよう とっさに名乗った「マキタトオル」
──それから、旭川や室蘭、弘前や大阪など、様々な場所を転々とする。忘れられないのが、「師匠」とする青江ママとの出会いだという。 銀座2丁目に「青江」という有名な店があったの。夏の間は鎌倉で営業していたので、カシミアのワンピース着て、長い髪で会いに行きました。 ママに会うと、ぱっとあたしを上から下まで見て「うちはダメよ。髪の毛が長い子を使わないから」と言われました。帰って、東京で髪をバッサリ切ってまた戻ったら、ママは「あの長い髪を切ったの!」と驚いて、「名前なんて言うんだい?」と聞いてきました。未成年なのがバレると捕まってしまうから、なぜかそのとき「マキタトオルです」と口をついて出ました。ママは「じゃあマキだね」と。 ──そのときに初めて「マキ」という名がついたのですか? そうです。青江のママがつけてくれた名前で、ずっと通してました。カタカナのマキ、だったけれど途中で色々変わってね。最後は悪魔の“魔”に“鬼”って書いてましたからね。その店には、東京から、銀座から、すごいお客さんが来ていました。
■あの頃、日本の法律ではダメだった
──19歳の頃、大阪のゲイバー「カルーゼル」で働き始めることに。 その店のママから「マキちゃん、あんたきれいなんだから、おっぱい入れたらいいんじゃない?」と言われました。名古屋にやってくれるところがあって行ったんですけど、断られたんです。「痩せててあばらが出てる。太ってからいらっしゃい」って。 「太るにはどうしたらいい?」と先輩に聞くと、「ホルモン(剤)を打てばいいのよ」と。その頃、薬局では1本100円で売っていました。 注射器も売っていて、週に2本くらい打ってたかな。すると胸が張ってきた。店でストリップもできるようになると、「もっと大きくしたい」と思うようになったのよ。相談すると、「タマ取っちゃえばいいのよ」って言われたんです。 その頃、日本の法律ではダメだったんですね。ただ、歌舞伎座の病院の先生に言ったら3万円で睾丸の摘出手術をしてくれました。 ところが、手術から3日ぐらい後に内出血して腫れちゃって。退院してまだ傷が開いたりするけど、店ではショータイムがあったりした。動くと開いちゃうんだけど、自分で傷を消毒して、ホチキスで止めて、ばんそうこうを貼って、舞台に出てました。