『情熱大陸』出演【井手上漠】性別にとらわれない新時代のモデル「コンプレックスを武器に」
私は「性別がない」という自分の性自認を、すごく嫌で悩む時期が長かったことから、そう思うようになりました。今、色々なメイクをして発信していく立場になってみて、男性的な骨格を持っていながら、女性的な顔に見せる技術もあることって私にしかない武器だと気づきました。事務所の先輩が「弱さを見せられる人が本当の強い人だ」と言っていたんです。弱いところを自分で理解できていなくて周囲に助けを求められない人は、ほっとかれてしまって孤独になってしまうから、自分の弱さををちゃんと理解して周りに助けてもらうことができる人が本当の強い人だと思う、と。それを聞いて、もっと自由で、人に頼っていいんだと思い、すごく生きやすくなりました。自分の弱さを認め、自分を強く見せる武器をどれだけ持てるかが人生。だから、人生の中でどれだけ自分だけの武器を増やしていけるかが、私にとっての人生の意味なのかもしれません。
──18歳のときにに刊行されたフォトエッセイ『normal?』を読んで、あの時点ですでに精神的に成熟されているなと思ったのですが、それから3年経ち、発信したいことや、伝えたいことに変化はありましたか?
私は発信することを仕事にしているけれど、家族とか友達とか、身近になればなるほど気持ちを伝えるのが苦手。それがずっと悔しかったんです。そのことを尊敬する知人に相談したときに「言葉を学びなさい、言葉は哲学だから」と言われました。ずっと本を読むことは苦手でしたが、その言葉をきっかけに本を読むようになりました。元々目よりも耳からの情報の方が入りやすいタイプで、スピーチの動画を見るのが中学生の頃からの趣味でした。でも、実際ちゃんとした言葉の形って目でしか追えないな、ということに本を読むようになってから気がつきました。耳での刺激よりも目での刺激のほうが記憶に残りやすいんですよね。最近は友人たちに教えてもらったおすすめの本を読み漁っています。そのおかげか、18歳くらいの頃に比べると、選ぶ言葉の質感や伝え方が全然変わってきました。今まで肯定的に思っていたことが否定的に思えたり、逆にこれまで否定的に思っていた事柄が今は肯定できるものに変わっていたり、価値観の変化もすごくあるので、本を読んで視野が広がったと感じます。
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井手上漠(いでがみ・ばく) 2003年1月20日、島根県隠岐郡海士町出身。2018年、高校1年生で第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにてDDセルフプロデュース賞を受賞。その後、性別にとらわれないモデル・タレントとして、多数のファッション誌・美容誌、TVドラマ等で活躍。2021年には『井手上漠フォトエッセイ normal?』を刊行した。 撮影/岩谷優一(vale.) ヘアメイク/金澤美保 スタイリング/坂下シホ モデル/井手上漠 Edited by 佐藤 水梨
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