2年前まで高校教諭だった“シン・理想の上司”、町田・黒田監督が持つ「リーダーとしての3つの手腕」
◆町田ゼルビア躍進の秘密は、黒田監督の「選手の才能を開花させる力」
サイバーエージェントが親会社になってからは、その豊富な資金によって練習施設などの環境面が整備された。新戦力の獲得も、各チームのトップ選手を引き抜いてきたのかと思うが、実はそんなことはない。 今季町田に加入し活躍している選手の多くは、昨季まで他のチームで控えに甘んじていたり、高校時代は無名だったりした選手が多いのだ。 例えば現在町田の得点源として大活躍している呉世勲(オ・セフン)は、2022年から昨季まで清水エスパルスに在籍しており、2年間通じて38試合3ゴールという結果で控えに留まっていた。今季町田に期限付き移籍してからは、ここまで17試合にスタメン出場で6ゴール1アシストという素晴らしい結果を残している。 また「町田のスピードスター」として圧倒的なパフォーマンスを見せている平河悠も、高校時代は無名で卒業後は就職も考えていたほどだったが、山梨学院大学に進んでサッカーを続けた結果、そのスピードが評価され2021年に町田の特別指定選手となった。 無名で実績もなかった2人の選手だが、町田に来て黒田監督の元で才能が開花し、呉は韓国代表に初招集、平河もU-23日本代表に選出されている。 黒田監督の「選手の才能を開花させる方法」はとてもシンプルで、その選手の明確な強みを見出し、それが生きるチーム戦術を徹底することで、その選手がその力を発揮する場面を多く生み出すのだ。 194cmの長身でハイボールに強い呉が、自陣からでもロングボールを蹴り込み空中戦で競り合いをし、そのこぼれ球を確実にマイボールにしディフェンスラインの裏のスペースにパスを出して俊足の平河が走り込む。サイドからのセンタリングにまた長身の呉がヘディングを狙いにいく、という戦術を町田は徹底的に繰り返す。 「高さ」と「スピード」という選手が持つそれぞれの強みを生かす戦術を徹底することで、選手の才能を開花しながらそれをチームの成果にもつなげているのだ。 ビジネスの現場でも、メンバー1人1人にはそれぞれの強みがあり、それを発揮できていなければチームとしてのパフォーマンスも上がらない。その強みを見極める力と、その強みを生かす戦略を実行できるかどうかもビジネスリーダーには必要な力だ。