投票日まであと1週間...米大統領選「5つの争点」を徹底解説 独自調査で見えた「最大の争点」は?
第3の争点「移民」...トランプはこの問題で「勝ち」を確信
ハリスは移民に関して、以前よりも強硬な姿勢を打ち出している。この問題については、民主党寄りの有権者からも深刻な懸念の声が出ているからだ。 本誌の調査で、より強硬な措置を求める人は民主党支持者の間でも直近の10月で53%。昨年7月の54%からほとんど変わっていない。一方、トランプ支持者の間では、一段の強硬策を求める人が昨年7月の79%から87%へと上昇している。 調査を担当したシェルティンガは「民主党寄りの有権者ですら現状に不満を抱く人のほうが多いのだから、民主党としても党の方針を見直すしかないだろう」と述べる。 ハリスは従来、最終的な国籍取得を視野に入れた包括的な移民改革を唱えていた。幼少期にアメリカに入国した若年移民の強制送還を猶予する措置も熱烈に支持してきた。移民家族の隔離収容やメキシコ国境沿いの壁建設など、トランプ政権時代の政策は批判してきた。 今年5月には、トランプ派議員の抵抗で否決された超党派の国境警備強化法案の復活を約束している。 バイデン政権の発足に当たって国境対策を委ねられながら、彼女が移民政策で有効な手を打てなかったのは事実。そして世論の動向もあるから、今のハリスは不法移民に対する有権者の懸念に何らかの形で応えなければならない。 各種の世論調査を見ても、移民政策に関してはハリスよりトランプを信頼する有権者が多い。そう指摘するのは、米シンクタンク「移民政策研究所」のジュリア・ジェラットだ。 「国境周辺で起きている混乱や国境に押し寄せる人の波などの写真を見たり、新たに流入してきた移民の受け入れに苦慮している主要都市の様子を目の当たりにして、世論が大きく動いている」 ジェラットによれば、今のハリスは不法移民の摘発を望む有権者の支持を獲得するために、以前より保守的な姿勢を打ち出している。 実際、ハリスは正規の入国手続き所のある場所を除いて国境を閉鎖すると約束した。そう簡単に閉鎖は解かないとも言った。不法に入国した者は国外追放し、5年間は再入国を禁じ、違反を繰り返す者には重罪を科す考えも表明している。 「国境管理強化の必要性に重点を置くことで有権者の信頼を勝ち取りたい。ハリスはそう考えているようだ」と、ジェラットは言う。 対するトランプは、自分がホワイトハウスに戻ったら「2000万」の不法移民を国外追放すると豪語している。 しかしカリフォルニア大学デービス校のブラッドフォード・ジョーンズ教授(政治学)に言わせると、国境警備の強化に関する今春の超党派提案が可決されていれば、今さら「強硬策」を講じる必要などなかったはずだ。 「国境が制御不能だという主張も、強硬策が必要だという議論も、実は今春の超党派法案に盛り込まれていた」と、ジョーンズは言う。 「しかしトランプは、この話で自分の選挙戦を盛り上げたかった。だから(今年5月の時点では)法案をつぶす必要があった。彼はうまくやったし、移民問題に焦点が当たれば自分の勝ちだと今も思っている」 ──ビラル・ラーマン