予測される首都直下巨大地震 1400万都民の「水」は大丈夫か─“水難民”大量発生も:放置された浄水場の耐震強度不足(1)
必要な耐震性能の3分の1にも満たない箇所も
元幹部職員が把握しているだけでも、朝霞、金町、三郷の3浄水場の「ボトルネック」と呼べるような施設で耐震性能の不足が見られたという。 たとえば、都の施設では最大の処理能力を誇る朝霞浄水場の地下にあり、川から引いてきた水を地上にくみ上げる「原水ポンプ所」。荒川の取水堰(ぜき)から引いてきた原水を地下30メートルにある原水渠(きょ)を経由して朝霞浄水場にくみ上げるとともに、東村山浄水場に原水を送水することもできる、最も重要な機能を持つ施設だ。 「原水ポンプ所の地下部では耐震性を満たしていない箇所が複数あり、特に原水の通り道である原水渠の耐震性はかなり低かった。もしマグニチュード7クラスの地震で原水渠が破損するようなことになれば、川から引き入れた水を浄水の工程に移すことも、東村山浄水場に送水することもできなくなります。その結果、東京都の水供給量が一気に落ち込んでしまうことになるのです」 私たちが関係者に取材して得た情報によると、朝霞浄水場の原水ポンプ所では、必要な耐震性能基準の3分の1にも満たないほどのかなり低い数値を示す箇所もあったという。元幹部職員が懸念する事態は、十分に起こり得ると考えざるを得ない。 金町浄水場と三郷浄水場もまた、深刻な欠陥を抱えていることが分かった。 金町浄水場には、川から水を取り込む2基の取水塔がある。それぞれ1941年と64年完成の歴史的建造物で、耐震診断の結果、いずれも耐震性に問題があると分かった。川からの原水の取水ができなくなるという点は、朝霞の原水ポンプ所の問題と共通している。沈殿池、ろ過池といった敷地内の施設の多くでも規定値より低い耐震性能しか有しておらず、取水塔同様、耐震化の対象施設となっている。 三郷浄水場でも、1系統しかない原水ポンプ所をはじめ、沈殿池などの耐震性能が低いことが判明。元幹部職員によれば、導水路及び配水池とポンプ井の連絡管などの接合部では耐震診断こそ実施されていないものの、構造上、大きな揺れに耐えられず、ずれや抜け出しにより漏水の恐れがある箇所が複数あるという。実際に東日本大震災による震度5強の揺れで同浄水場の導水路接合部では大規模な漏水が発生し、水路を停止しての復旧工事を実施している。