予測される首都直下巨大地震 1400万都民の「水」は大丈夫か─“水難民”大量発生も:放置された浄水場の耐震強度不足(1)
都水道局が2021年に策定した「東京水道施設整備マスタープラン」(以下、マスタープラン)や「東京水道経営プラン2021」では、これら4浄水場についても耐震化を進めているとうたっている。逆にいえば、現時点では耐震性が足りないとも解釈できる。取材を進める中で、水道局に在籍した経験があり、浄水場の構造に詳しい元東京都幹部職員から、驚くべき情報がもたらされた。 「実は、これら4カ所の浄水場内の複数の施設で、耐震性が大幅に不足しています。都民への水供給の約80%は、都の北側を流れる利根川・荒川水系によって支えられており、この4浄水場は規模の大きさからいっても、いわば東京の水供給の “要”。もし、今、マグニチュード7クラスの地震が首都圏を直撃し、これらの浄水場が破損して停止するに至ったら、都民への水供給に深刻な影響が出ることが予測されます」
元幹部職員も驚いた「ボトルネック」の耐震性不足
東京都水道局は2011年の東日本大震災後も含め、過去に民間の専門業者に委託した浄水場の耐震診断を行ってきた。「レベル2地震動」という、その地域で起こり得る最大の地震動の波形を使ったシミュレーションで、浄水施設の各構造物がどの程度耐えられるかを調査している。 この元幹部職員によると、その結果は水道局内でも診断を実施した建設部など限られた部署内でしか共有されず、他の部署では閲覧することさえできなかった。不審に思った元幹部職員は、局内の人脈を駆使し、非公式なルートで診断結果の一部をなんとか入手した。データを目にしたときは、思わず息をのんだという。 「これは完全にアウトだろう……と、血の気が引きました。水道局内でも極秘扱いとされたのは、診断結果が予想をはるかに超えて惨憺(さんたん)たるものだったため、『これが表に出たらマズい』という意識が働いたのではないでしょうか。それほど衝撃的な内容だったんです。ほとんどの浄水場では、沈殿池やろ過池などは複数の系列で構成されています。そのため、一部の箇所が損壊などにより停止した場合でも、正常な系列のみで処理量を調整して浄水場としての機能を継続できるようになっています。一方で、系列が1つか2つしかなく、ここをやられたら浄水場の機能全部が駄目になる『ボトルネック』とも呼べる箇所がいくつかあるのですが、それらの耐震性能の数値がかなり低いものが少なくなかったのです」 ちなみに、この話に出てくる沈殿池とは、薬剤によって凝集した原水の濁りを沈殿させて取り除く池のこと。それに続くろ過池は、砂や砂利の層を通すことで水をきれいにする施設だ。