予測される首都直下巨大地震 1400万都民の「水」は大丈夫か─“水難民”大量発生も:放置された浄水場の耐震強度不足(1)
複数の浄水場停止で「水難民」発生の恐れ
このように、それぞれの浄水場がリスクを抱えているが、「最悪のシナリオ」は、これらの4浄水場のうち2つ以上が、同時に使えなくなる事態だという。元幹部職員は次のように語る。 「4つの浄水場のうち1カ所が駄目になったら、給水所への送水系統を切り替えて他の浄水場からのバックアップで対応するでしょう。都内の一部では断水や給水圧力の低下も考えられるが、最悪、応急給水車を出せばなんとかなるかもしれない。しかし、もし4浄水場のうち2つ以上の浄水場が同時に稼働できなくなったら……。規模の大きさから見ても復旧は長期に及ぶ。今回の能登半島地震のように他の自治体から応急給水車などによる助けを受けられるとしても、人口が圧倒的に多い都民への長期的給水の継続は極めて難しい。都民は被害の少ない東京都以外の地域に水を求めて避難せざるを得なくなるでしょう。でもそれほどの被害が出ている状況で、場合によっては数百万人になるかもしれない避難民を受け入れる余力が、近隣の自治体にあるのでしょうか」 それでも震災直後にはまだ応急手段がある。災害時に備え、東京都内には213カ所、およそ半径2キロメートルの距離内に1カ所の割合で「災害時給水ステーション」が設けられているのだ。地下に設置された応急給水槽に水道水が貯蔵されており、非常時にはここに容器を持っていけば、成人が1日に必要な飲料水の量とされる3リットルの給水を受けられることになっている。ちなみに、3リットルはあくまで飲料水の量なので、洗濯やトイレなどに使う水の量は含まれていない。 こうした施設やその他の水道施設などに貯蔵されている水量は、1400万人の都民の3週間分以上だという。しかし元幹部職員によれば、震災による火災の初期消火で使われたり、漏水により一部が失われたりすることも考えられるので、実際に想定通りの期間使用できるかは分からないという。もし、浄水施設の復旧がそれより長期化するような事態になれば、都民は文字通り、干上がってしまう。近隣自治体での避難民受け入れも追いつかなければ、行き場を失った大量の「水難民」が発生するという未曽有の事態を招きかねない。