ウーバーイーツの配達中にたまーにある、子供たちとのほっこりエピソード【チャリンコ爆走配達日誌】
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第35回 ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります! * * * これまでの連載を振り返ってみますと、報酬が突然下げられる、マンションの入館手続きが煩雑で時間がかかってBAD評価を受ける、チップをもらうためのテクニック、現金決済でのトラブルなど、仕事の愚痴やカネの話ばかり。こんな内容では皆さまも読んでいてイヤな気分になるでしょう。 そこで今回は、読み終わった後に皆さまの心がほっこりするような「子供に受け渡しをした話」を紹介します。 とある日の昼下がり、マクドナルドから向かったのは江東区にあるマンション。建物の入口にあるインターホンを押して館内に入りエレベーターで上へ。目的のフロアに到着後、部屋を探しながら歩いていると各部屋の前にたくさんの傘が。どうやらファミリー向けの間取りのマンションのようです。 部屋の前に到着して、置き配の指示がないことを確認してドアの横のインターホンを押すと「はーい」と大人の女性の声が返ってきました。 ところが待っていてもなかなか出てきません。建物の入口でインターホンを一度押すマンションの場合、ドア横のインターホンを押したらほとんどの方は30秒以内に出ていただけるのですが、なかなか出てきません。もう一度インターホンのボタンを押そうとしたら3歳ぐらいの男の子が出てきました。右手に電車のおもちゃを握りしめて。 「ありがとうございます!」 元気よくあいさつしてくれるのは嬉しいのですが、こちらが渡す商品はスターバックスの紙袋ふたつ。小型のバッグタイプの袋なので、大人の方なら片手で大丈夫ですが、男の子の小さな手にドリンクがふたつ入った袋と、ドーナツが2個入った袋、計2袋を渡すのは不安です。 おそらく、お母さんのお手伝いをしたいという気持ちで出てきたのでしょう。そんな彼の思いを無下にしてお母さんを呼ぶわけにはいきません。かといって2袋を無理に渡せば、お母さんのところへ持っていく途中で袋を落としてしまい、飲み物をこぼしてしまう可能性があります。 そこで「一旦、電車のおもちゃを置いて、ふたつの袋を両手で持ってお母さんのところに届けようか」と提案をしてみました。結果は却下。最初は聞こえなかったのかなと思って、同じ質問を繰り返したのですが、思いっきり首を横に振られました。どうやらお手伝いをしたいという気持ちと同じぐらい電車のおもちゃを持っていたいようです。 仕方ないので、まずは袋を落としても大丈夫なドーナツの入った袋を渡して「これをお母さんに渡したら、もう一度ここにきて」と伝えて運んでもらうことにしました。しばらくすると男の子と一緒にお母さんが登場。事情を察したお母さんは「手間をかけてすみません」と恐縮していましたが、こちらとしては面白い体験ができたので「全然大丈夫です」と笑いながら子供にドリンクの入った紙袋を渡しました。