復活の伝統女子校、山脇学園の「進化と自主性」 伸びる進学実績、米コロンビア大や医学部にも
「やらされている感」を脱して自主性を促す環境と設備
もちろん授業も「進化」した。教員の研修を徹底するとともに、生徒が主体的に学べるペア学習、グループ学習などを積極的に導入。2025年には高1に「国際教養(ILA)コース」を設置する予定もある。教科横断型の独自教育「総合知カリキュラム」や幅広い学外活動などの取り組みなどによって、生徒たちは大きく変化したと西川氏は語る。 「本校では、まず生徒に授業の狙いや評価規準を伝え、目当てを理解させたうえで授業を進めます。目的の明確な双方向の授業で、生徒の表情は過去の一斉授業とはまったく違ったものになりました。彼女たちは受け身ではなく、とても楽しそうに『自分の50分間』を過ごしています」 こうした活発な授業の中で、生徒は互いに得手不得手があることを知ったり、意欲的な友達に刺激を受けたりする。全校生徒1600人という規模を持つ同校の、その多様性こそが宝だと西川氏は言う。 「失敗しても笑われない。わからないときにはわからないと言える。こうした安心できる環境でこそ子どもたちは挑戦し、自らを成長させることができます。コロンビア大にチャレンジするような子もどんどん出てきてほしいけれど、全員がアメリカで科学者になりたいわけではないはず。1600人の生徒の、1600通りの志を応援したいのです」 その言葉どおり、2023年度進学先の大学も文系・理系にさほどの偏りはなく、85大学164学科とあらゆる分野にわたっている。 「学力向上の指針にしているのは定期テストや模試ですが、どこに進学するかが最重要課題ではないので、点数だけで単純に評価するわけではありません。生徒は面談で成長したところや伸び悩んでいるところを振り返ります。テストの結果をどう次に生かすかを生徒自身が考え、教員に対してフィードバックを行います」 多様性を守ることで、生徒自身の学習意欲を伸ばしていると語る西川氏。「やらされていると思っているうちは伸びませんから」と断言するが、その姿勢は学校の施設にも表れている。2022年に整備・再整備した「ラーニングフォレスト」や「セルフスタディアイランド」は、グループワークや集中しての独学など、必要に応じて使い分けられる自習スペースだ。学びはあくまで自主的なものである、と西川氏は考える。「学びを自走する場所」の環境を整えて、「やらされている感」からの脱却を待つのだ。