『おむすび』タマッチ役で注目の谷藤海咲、アイドル卒業から1年で朝ドラ出演「オーディションでの手応えはゼロだったのでダメだろうと…」
■「みんなで一つの作品を作り上げていっている感じ」
――『おむすび』では女子高生ギャルを演じられていますが、開幕が控えている舞台『not only you but also me』では、また全く違ったタイプの女子高生を演じますよね。この作品で挑む倉持雪については、どのようなキャラクターだと捉えていますか? 「雪はパーソナルな部分で悩みを抱えていて、日々、それに奮闘しているのですが、最終的には自分で命を絶つという選択をする役柄です。とはいえ、ずっとナーバスなわけでもなく、陰と陽のそれぞれの瞬間があって。自分自身も生きていたらそういう瞬間ってありますし、そういう部分を意識しながら演じています。自分も以前、同じような想いを抱えたことがあったなとか、キャラクターとの共感度を高めていって、観ていただく方にも共感していただけたらいいなと思っています」 ――雪のどんなところに共感しました? 「雪は家庭の問題で学業だったり、いろんなことにコンプレックスを持っていたりする子で、私自身はありがたいことにすごく大切に育ててもらったので、家庭の問題とかはありませんでしたが、母子家庭だったので母に迷惑をかけないようにしようっていう意識は小さい頃からずっとあったのかなと。母親に心配かけたくないとか、自分がちゃんとしなくちゃいけないというところは、雪の想いとつながっている部分でもあるのかなと思います。私自身ではなくても、周りに似たような経験をしている子がいたり、そういう子の相談役というか話を聞く機会も多かったりするので、私の周りでもこういう子がいたなとか、そういうものを上手く合わせていったら、雪というキャラクターが掴めるようになってきました」 ――稽古場の雰囲気はいかがですか? 「みんなで一つの作品を作り上げていっている感じをすごく感じています。もちろん演出家さん、プロデューサーさんがいらっしゃる中でですが、キャストみんなで演出についてや、作品の展開について話し合う場面を設けていただいたりしていて、与えられたものをやるというよりも、一緒に作っていっている感じがある作品だなと思います」 ――『デビュー』読者のような10代~20代の若い世代に、どんなふうにこの作品を楽しんでもらいたいですか? 「この舞台は“境界線”が一つのテーマになっているのですが、生きているといろんなところで線引きされて比べられたりすることってあると思います。社会に出てからもそうですが、学生ってよりそこをセンシティブに感じてしまうじゃないですか。性別だったり、誰が好きとか、見た目とか本当にいろんなことを気にしてしまう時期で。大人になってから振り返ると、そんなに気にすることでもなかったなって思えることのほうが多かったりもしますが、当時はそんなことに気づけないし、すごく気にしてしまうんですよね。この作品はそういう部分に触れている作品なので、雪のように傷ついて悩んでいるような人や何かに劣等感を感じていたりする方たちに、他人が引いた境界線ではなくて自分が思うように自由に生きていいんだとか、もっと曖昧でいいんだというふうに少しでも感じていただけたらいいなと思います」 ――朝ドラでもこの舞台でも女子高生の役を演じられていますが、谷藤さんご自身は、当時どんな学生でしたか? 「私は15歳からアイドル活動を始めたこともあって、高校も途中で通信の学校に切り替えてしまったので、いわゆる“青春”みたいなものは1年間くらいしか経験できなかったのですが、学校はすごく大好きでした。アイドル活動で行けない日もあったからこそ、学校に行ける日がすごく楽しみで。ただ、疲れていたこともあって授業はほぼ寝ていたので、成績はあまりよくはありませんでしたけど(苦笑)。勉強という部分に関しては、もうちょっとやっておけばよかったなと後悔することもありますが、そこで出会った友達は今でもすごく仲が良くて、そこで出来た人との繋がりは今になっても消えないなと思っています」 ――昨年までアイドル活動をしていた谷藤さん。これまでも舞台などに出演していますが、お芝居の世界に飛び込んだきっかけは何だったんですか? 「私はアイドルをやる前に、もともと子役をやっていた時代があって。子供のころはすごく内気な性格だったのですが、ダンスを習い始めてからステージ立って人前でパフォーマンスしたり目立つことが好きになっていったんです。そういったことも含め、小学4年生のとき、子役ブームもあって、母親に『ここの事務所を受けたい!』と言ったのが、最初のきっかけです。なので、10歳くらいのときからお芝居に対しての興味はあって、その後、かなり時が空いてアイドルになったのですが、アイドルをやりながらもお芝居をやりたいという気持ちはずっと芯にはありました。ただ、アイドル活動ってすごく忙しいので、そんなに自由にできないし、長く続けていると自分もどんどん責任ある立場になっていって、別のお仕事でライブを休んだりすることもできないし、アイドルとお芝居の両立というのはなかなか難しくて。舞台などに出演させていただく機会はありましたが、やっぱり活動の中心はアイドルだったので、お芝居をやりたいというのは、卒業を決めた理由の一つではあります」