パレスチナの詩人や画家を紹介する「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」がワコウ・ワークス・オブ・アートで5月開催。奈良美智らが参加
参加作家はヘンク・フィシュ、ムスアブ・アブートーハ、リフアト・アルアライール、スライマーン・マンスール、奈良美智
パレスチナの詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない(If I must die,you must live)」がワコウ・ワークス・オブ・アートで5月17日~6月29日に開催される。本展のタイトルは、パレスチナの詩人リフアト・アルアライールが生前、最後にSNSに投稿した詩の冒頭部分。2023年10月、ガザ侵攻でイスラエル軍の空爆により絶命したアルアライールが残した詩は、展覧会を通底するメッセージとなっている。 本展は、オランダ出身の作家ヘンク・フィシュのキュレーションにより、フィシュの新作を含む彫刻作品やドローイング、ムスアブ・アブートーハの詩、画家スライマーン・マンスールの版画、ガザのためにアーティストたちが制作したポスターを中心に紹介。 また、フィシュと親交があり、企画意図に賛同した奈良美智の新作も展示される。 ヘンク・フィシュは、詩的で哲学的な思索から生み出される擬人化された立体や、鑑賞者の記憶に強く残る抽象性の高い造形作品によって知名度を高め、ヴェネチア・ビエンナーレ(1988)やドクメンタ9(1992)など、数々の国際展に参加。2023年にWilhelminaring賞を受賞し、現在、受賞記念展がCODA美術館(オランダ)にて開催されている。 ガザ地区の難民キャンプで生まれ育ったムスアブ・アブートーハは、2022年に出版した詩集『Things You May Find Hidden in My Ear: Poems from Gaza』が、パレスチナ・ブック・アワードやアメリカン・ブック・アワードを受賞、全米批評家協会賞の最終候補にも選ばれた。 2017年にはガザで初めての英語図書館「エドワード・サイード公共図書館」を創設、2017~2019年までガザのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)学校で英語教師として教鞭をとった。 スライマーン・マンスールは、パレスチナ芸術家連盟、アル・ワシティ・アート・センターを共同設立しディレクターを務めるなど、パレスチナの美術界を牽引してきた画家のひとり。 第一次インティファーダ(蜂起)の際には「ニュー・ビジョン」アート運動としてイスラエルの物資をボイコットし、身の回りの泥や木材、染料などの素材を作品に使用した。 フィシュの出品作のタイトルは、”Que sais-je? “( 私は何を知っているのか?) と、私たちに問いかけてくる。世代の異なる作家たちの想いや言葉が響き合う本展を通して、現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らせたい。
Art Beat News
【関連記事】
- 親パレスチナ団体はなぜ絵画を切り裂いたのか。環境問題やパレスチナ侵攻とアートについて「セトラー・コロニアリズム(入植植民地主義)」の視点から考える(文:Maya Erin Masuda)
- 2024年3月11日に国立西洋美術館で起きたこと、2023年10月7日から――あるいは、もっと以前より、そして、この瞬間も――ガザで起きていること #1 (文:山本浩貴)
- ヴェネチア・ビエンナーレでイスラエル館代表アーティストが停戦実現まで開館を拒否。会場ではジェノサイドへの抗議活動も
- 芸術は「本質的に」道徳的・倫理的な営みとしてある。2024年3月11日に国立西洋美術館で起きたこと、2023年10月7日から――あるいは、もっと以前より、そして、この瞬間も――ガザで起きていること #2 (文:山本浩貴)