史上最も明るいガンマ線バーストの正体が「普通の超新星爆発」と判明
■GRB 221009Aの正体は「普通の超新星爆発」
Blanchard氏などの研究チームは、GRB 221009Aの残光をウェッブ宇宙望遠鏡で詳細に観測し、その正体に迫る研究を行いました。1万年に一度と言われるほど明るかったガンマ線バーストが、2022年7月に本格的な運用を開始したウェッブ宇宙望遠鏡で観測できるタイミングで出現したことは、文字通り幸運な出来事と言えます。 ただし、GRB 221009Aはあまりにも明るすぎたため、発生直後から観測しても意味のあるデータを得ることはできません。暗闇の中での明るすぎるヘッドライトは、車体を隠してしまうのと同じようなものです。そこでBlanchard氏らは、GRB 221009Aの残光が十分に暗くなったタイミングを見計らい、発見から168日後と170日後の2回に分けて観測を行いました。 観測の結果、超新星爆発に関連して見られる酸素、カルシウム、ニッケルなどの元素の存在を示す光(近赤外線の吸収および放射スペクトル)を捉えることに成功し、その光には他の超新星爆発と比較して際立った特徴がないことが分かりました。意外なことに、史上最も明るいガンマ線バーストであるGRB 221009Aの正体は「特徴がない普通の超新星爆発」だったことになります。 この結果から、GRB 221009Aが特別明るかった理由として、「方向」が重要だった可能性があります。先述の通り、ガンマ線バーストはエネルギー放射が狭い範囲に絞り込まれていると推定されています。GRB 221009Aはエネルギーの放射が完璧に地球の方向に向いていたために、極めて明るいガンマ線バーストとして観測された可能性があるのです。ただし、GRB 221009Aが特に明るかったのは、他のガンマ線バーストと比較してさらに狭い範囲にエネルギーの放射が集中していたからだった可能性もあります。 また、今回の観測では、爆発した恒星が属する銀河は重い元素が少ないという特徴があることも分かりました。GRB 221009Aが今から約19億年前の宇宙で発生した爆発だったことと総合すると、GRB 221009Aの元となった恒星は非常に重く、重い元素が少なく、高速で自転している、という特徴があったと推定されます。 この推定が正しいかどうか、さらには宇宙全体ではどれくらいの頻度でこの条件が揃うのかが解明されることで、GRB 221009Aのような極端に明るいガンマ線バーストがどの程度珍しいのか、そしてどのようなメカニズムで発生するのかが明らかになるかもしれません。