3年負けなし「盤石」阿部一二三、ライバルは「妹」…ボディービル誌で表紙飾る肉体
[エース出陣]<2>柔道男子66キロ級 阿部一二三 26 パーク24
夏のパリ五輪が開幕するまで1か月を切った。目前に迫った大舞台で、注目競技の日本のエースたちはどんな戦いを挑もうとしているのか。担当記者が紹介する。 【写真】東京五輪金メダリストの阿部一二三と阿部詩
日本発祥の競技で言葉通り「お家芸」の柔道は、2021年の東京五輪で金メダル9個。パリでは妹の阿部詩(パーク24)とともに、男子のエースとして2連覇に挑む。兄妹(きょうだい)で登場する7月28日に日本代表全体を盛り上げられるように、「オール一本勝ち。隙のない圧倒的な柔道で、金メダルを持ち帰る」と気力十分だ。
稽古を優先して出場する大会を絞っていたとはいえ、東京五輪からの3年間は国際大会で負けなし。大きく伸ばしたのは、対戦相手の対策の一歩以上先を行く「隙がない柔道」だ。
軸となっているのは体幹を中心としたパワーの強化。22年、23年の世界選手権では、対戦相手が阿部の得意とする組み手争いを諦め、展開の打開を狙って強引に抱きついていく場面も目立ったが、それでも体がぐらつかない。「指導」の内容でリードして担ぎ技で仕留める勝ちパターンは盤石となった。アスリート全体として見れば小柄な66キロ級ながら、ボディービルの専門雑誌で表紙を飾るほどに自らのトレーニングに力を入れてきた。
技術面でも進化を見せつけた。昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会。得意の担ぎ技を警戒する相手の引けた腰を狙って足技を連発して優勝。前後左右どの方向の攻防でも優位に立ち、「相手もどう戦っていいか分からないくらいにしたい」と話す。
直近で出場した3月末のGSアンタルヤ大会も難なく金メダル。こうなると気をつけるのはミスだけだろう。全日本男子の鈴木桂治監督は「(指導する)我々が結果に勘違いせず、引き締めていきたい。外国人選手にとっても、一二三に負けたことは大きなモチベーション(意欲)になっていると思う」と話し、本番で浮足立たないよう、基本の稽古の徹底や相手の研究に力を入れているという。