空自で最も“過酷”な機体!? E-2「ホークアイ」にないものとは 人間の生理現象に深刻な影響も
E-2「ホークアイ」にトイレがないワケ
E-767のような大型早期警戒機と同等の任務を、より少数の乗員で遂行しなければならないため、クルーの作業負担は無視できない状況です。万が一の「緊急事態」に備えて簡易ケミカルトイレが用意されているとはいえ、「おまる」に用を足さなければならないという状況は、乗員にとってはできれば避けたいものでしょう。長時間の飛行中に限られた空間で生理的欲求に耐えなければならないという不便さは、E-2の抱える最大の問題点といえます。 では、なぜトイレがないかというと、元々空母艦載機として設計されたため、機体の物理的なサイズが限られており、トイレスペースを設けることが難しかったからです。空自仕様の新型E-2Dでは待望の個室トイレが増設されましたが、既存のE-2Cでは乗員が事前に水分摂取を控え、乗る前には必ず地上で用を足しておくという原始的な方法しか選択肢がありません。 根本的な解決にはE-2以外の早期警戒機を導入する必要があります。例えば、ビジネスジェットをベースとしたイスラエルのIAI G550CAEWやスウェーデンのサーブ「グローバルアイ」、旅客機ベースでより大型のボーイングE-737など、現在世界の市場で販売されている機体にはすべてトイレが設置されています。 E-2Cだけがトイレ問題を抱えており、他の機体を取得する計画がない以上、現状では乗員に我慢してもらうしかないのです。 ちなみに航空自衛隊には、より大型のボーイングE-767早期警戒管制機もありますが、こちらはトイレはもちろんのこと、食事がとれる休憩スペースまで完備しています。ただ同機は4機しかないため、E-2「ホークアイ」との連携が必須です。 日本の防空はE-2「ホークアイ」乗員の並々ならぬ忍耐によって支えられています。彼らの「トイレとの戦い」は、まさに見えざる苦労と称するにふさわしいものでしょう。 ※一部修正しました(11月13日19時30分)。
関 賢太郎(航空軍事評論家)