もう話題は”キングカズ”だけではない?!3連勝でチーム年間最多勝利に並んだ横浜FCなぜ強い?
1点をリードして迎えたハーフタイム。敵地・IAIスタジアム日本平のロッカールームで、13シーズンぶりにJ1を戦っている横浜FCの下平隆宏監督は、選手たちを前にして問いかけた。 「後半は守備を固めて守り切ることもできる。みんなはどうしたいと思っているのか」 清水エスパルスと対峙した22日の明治安田生命J1リーグ第12節。結果から先に言えば後半に両チームともに1点ずつをあげ、3-2で逃げ切った横浜FCが湘南ベルマーレ戦、鹿島アントラーズ戦に続いて3連勝をマーク。J1におけるクラブの連勝記録をさらに更新し、これまでに唯一J1を戦った2007シーズンにあげた年間4勝に、シーズンの約3分の1を終えた段階で追いついた。 新たな歴史を紡いだ一戦のターニングポイントは、ハーフタイムにおける下平監督の言葉にある。昨年5月にヘッドコーチから昇格する形で横浜FCを率い、J2戦線で2位に食い込ませて自動昇格を勝ち取った48歳の青年指揮官の脳裏には、19日のアントラーズ戦が色濃く刻まれていた。 エスパルス戦と同様に、1-0とリードを奪って試合を折り返した。しかし、後半は執念をむき出しにして襲いかかってくる常勝軍団のプレッシャーに押され、自陣に引き気味になったまま、守備に追われる戦いに終始するも、なんとか逃げ切り、アントラーズから初勝利を奪った。 結果にはもちろん満足できた。しかし、キーパーから丁寧にパスをつなぎ、攻撃を組み立てることで相手を押し込む今シーズンの戦い方と照らし合わせたときに、内容に関しては忸怩たる思いが残った。だからこそ、エスパルス戦のハーフタイムで、下平監督は選手たちよりも先に答えを言った。 「個人的には、オレはもう一回ボールをもって攻撃したい」 横浜FCの選手たちが熱い思いを共有していたことは、後半に展開された戦いぶりが物語っている。開始わずか5分。エスパルスの反撃を食い止め、ボランチの佐藤謙介から前半終了間際に勝ち越しゴールを決めていた元日本代表のFW皆川佑介へ、縦パスが入った直後だった。 皆川が落としたボールを左タッチライン際、しかも自陣で受けたルーキーのMF松尾佑介(仙台大学卒)が武器のドリブルを開始する。自慢のスピードを前面に押し出しながら、目の前に開けていたスペースをグングンと加速していく。敵陣の中央あたりまで侵入を許したところで、対面にいたエスパルスの右サイドバック、岡崎慎がたまらず間合いを詰めてきた。