東京五輪狙う19歳の秘密兵器GK小久保玲央ブライアンがポルトガル名門SLベンフィカでトップチームに異例抜擢
そして、昨年末に長崎で開催されたU-22ジャマイカ代表との国際親善試合に臨んだ、東京五輪世代となるU-22日本代表に小久保は初めて招集された。先発して最後までゴールマウスを守ったのはスペイン2部でプレーする21歳の山口瑠伊(エストレマドゥーラUD)で、小久保は19歳の谷晃生(湘南ベルマーレ)とともに、9-0で大勝した一戦をベンチで見届けている。 試合に出られなかったのは残念だが、遅ればせながら東京五輪に臨む男子代表へ食い込むためのスタートラインに立った。ジャマイカ戦の時点で5度目の招集だった山口と谷に対して、あえて小久保を初めて招集したのはなぜなのか。ポルトガルの地でさらにスケールを増している小久保の存在を、映像や技術委員会の報告などを介して、フル代表も兼ねる森保一監督も把握していたからに他ならない。 新型コロナウイルスの影響を受けて、東京五輪の開催そのものが1年間延期された。東京五輪世代では大迫敬介(サンフレッチェ広島)が高い評価を得ているなかで、アピールできる機会と時間が増えたことは小久保にとって追い風になる。さらに再び新型コロナウイルスの関係で、予想よりもはるかに早くベンフィカのトップチームへ本格的に合流するチャンスを得ようとしている。 ブラジル代表のエデルソン・モライス(マンチェスター・シティFC)や、スロベニア代表のヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)ら、一流の守護神を輩出してきた歴史をベンフィカはもつ。今シーズンも26歳のオディッセアス・ヴラホディモスを軸に、23歳のイワン・ズロビンがカップ戦を中心にプレー。20歳のミレ・スヴィラルは、すでにチャンピオンズリーグでプレーした経験をもつ。 ギリシャ代表のヴラホディモスにロシア出身のズロビン、そしてU-21ベルギー代表のスヴィラルとは、これまでもピンポイントでトップチームの練習に参加して顔を合わせてきた。そのたびに小久保はベンフィカ加入時に抱いた「少しでも早くトップチームで試合に出て、家族やレイソル時代のコーチ、仲間たちをはじめ、お世話になった方々に恩返しがしたい」という思いを増幅させてきた。 今回のトップチーム合流はシーズンが終わるまでの予定で、日々の練習で見せるパフォーマンスは来シーズンの小久保自身の立ち位置にも影響してくる。日本代表MF中島翔哉が所属する宿敵、FCポルトを勝ち点1ポイント差の2位で追走するベンフィカは、残り10試合に逆転でのプリメイラ・リーガ連覇をかける。再開後に待つ痺れる戦いの連続も、ホープを精神的にも成長させる糧になる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)