「介護保険を滞納した人」を待ち受ける過酷なペナルティーとは?
65歳以上の「第1号被保険者」は市町村に介護保険料を納めることになっているが、年金が少なく生活保護も受けない層は、経済的な困難から滞納に追い込まれやすく、結果として介護サービスを受けられなくなるという悪循環に陥るケースも少なくない。所得格差によって利用の公平性が損なわれている介護保険の現状に迫る。本稿は、結城康博『介護格差』(岩波新書)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 現役時代もリタイア後も 徴収される介護保険 2000年4月から介護保険がスタートして四半世紀になろうとしている。年老いて心身の機能が低下し介護が必要となれば、原則1割、一定以上収入のある人は2割もしくは3割の自己負担で介護サービスを利用できるのが介護保険だ。 もっとも、「高額介護サービス費」制度といって毎月の自己負担の上限額が決まっており、その上限は所得や家族構成に応じて1万5000~14万1000円と階層化されている。 介護保険は、(1)年金、(2)医療、(3)介護、(4)雇用、(5)労災といった「社会保険」の1つである。社会保険であるからには定期的に保険料を負担しなければならない。なお、介護保険に加入しなければならないのは日本に住所を有する人で外国籍であっても対象である。 加入する40歳以上65歳未満が「第2号被保険者」とされ、この層は自身が加入している医療保険料と合わせて介護保険料も負担することになっている。 また、65歳以上は「第1号被保険者」とされており、自ら介護保険を運営している保険者である市町村に保険料を納める。
多くの第1号被保険者の介護保険料は自身の年金から自動的に天引きされて市町村に徴収される。これは「特別徴収」とされ、2022年4月1日時点で約3234万人の高齢者が対象となっている。しかし、年金受給額が年間18万円に満たない人は、口座振替か納付書による納付で支払うこととなる。これらは「普通徴収」とされ約360万人となっている。 ● 滞納すればするほど 過酷なペナルティが待つ 介護保険も社会保険であるからには、介護保険法により保険料を滞納すると一定のペナルティが科せられる。もっとも、多くの人は自動的に保険料が引き落とされるため、主に第1号被保険者の「普通徴収」対象者が該当する。 第1段階として、保険料を1年以上滞納すると、サービスを利用するには一旦、全額自己負担することになる。その領収書等を市町村に持参し手続きすることで、保険給付分の9割(1割自己負担層)、8割(2割自己負担層)、7割(3割自己負担層)分が戻ってくる。