「介護保険を滞納した人」を待ち受ける過酷なペナルティーとは?
例えば、介護保険において「身体介護」のヘルパーを1時間利用すると、若干、地域によって差があるものの総費用4000円だ。ここから自己負担1割であれば、400円を支払えば残り9割分は保険給付となる。しかし、1年以上保険料を滞納すると、一旦、全額4000円を支払わなければならないのだ。 第2段階として、保険料を1年6カ月以上滞納すると、一旦、既述の全額支払う仕組みに加え、介護サービス利用後に手続きして返還される9割分の額から自動的に滞納している保険料分が差し引かれるため、結果、戻って来なくなる。 第3段階として、保険料を2年以上滞納すると、自己負担1割もしくは2割の人は3割負担となり、3割負担の層は4割負担となってしまう。 しかも、2年以上の介護保険料を滞納してしまうと、原則、時効となってしまい遡って保険料を支払うことができなくなるため、生涯自己負担割合が変わらない。もちろん、災害など特別な事情で一時的に保険料が支払えない場合は、徴収猶予や保険料の減額・免除される仕組みもある。
● 介護保険料滞納者は 毎年1万人以上 厚労省データから、ここ数年介護保険料滞納者の現状が窺える。特に、ペナルティによって1割負担が2割負担となるなど保険給付減額者は、2022年1万1026人、2021年1万1236人、2015年1万883人、2014年1万335人となっている(厚労省「平成26、27、令和3、4年度介護保険事務調査の集計結果」)。 これら1万人以上の人が要介護者となれば、生活保護受給者とならない限り充分な介護サービスを受けることは経済的側面から不可能だ。これらペナルティ対象者の大半は1年間の年金受給額が18万円未満といった者で、生活保護受給者以外の貧困層に多いと考えられる。彼(女)は生活保護受給に対して抵抗感があり、あえて受給申請をせず厳しい生活を送っていると筆者は考える。 そのため、よほどの資産家で介護保険そのものを全く充てにせず、自費で介護生活を送ろうとする稀な高齢者以外は、滞納するということは経済的に余力がないはずである。 なお、もう20年近く前にもなるが、筆者が従事していた時の在宅介護現場で、介護保険料を払わない高齢者がいたことを思い出す。年金保険料も滞納しており、無年金者で、社会保険など全く充てにしていなかった。親の資産を受け継ぎ、自らも自営業者として成功した超富裕層の高齢者であった。