「介護保険を滞納した人」を待ち受ける過酷なペナルティーとは?
「保険料を納める事務手続き、そもそも社会保障サービス自体に関心がない。自分のことは自分でやるから」といった言葉が印象的だった。このような社会保険に頼らない高齢者は、きわめて稀有な存在である。 ● 所得に応じて保険料支払額に 10倍以上の差が生まれる 65歳以上が毎月負担する介護保険料は、個人の所得に応じて額が異なる。2024年度から国基準が変わり第1段階から第9段階まであったのが、13段階にまで階層が細分化された。そのため、最も高い第13段階では基準額の2.4倍の保険料を支払うこととなる(表1-2)。 第1段階は、生活保護受給者もしくは世帯全員が住民税非課税世帯で年間合計所得80万円以下の者である。平均基準額となる第5段階は、本人が住民税非課税(ただし世帯内に課税者がいる)かつ年間合計所得金額が80万円超だ。いっぽう第7段階は、世帯に課税者がおり本人の合計所得金額が120万円以上、第8段階は、同じく210万円以上、第9段階は、320万円以上となっている。 もっとも、国基準の保険料階層は13段階ではあるが、市町村裁量で段階を細分化できるため、さらに細かく分かれている地域もある。
なお、具体的には2024年4月から、毎月の第1号被保険者の介護保険料は全国平均基準額が6225円(前回6014円)となっている。各地域(市町村)の平均基準額に段階ごとの値を乗ずれば介護保険料のおおよその金額が決まる。 仮に、基準額が6000円であれば第1段階が0.285であるから1710円、第13段階は2.4であるから1万4400円というわけだ。これが市町村によって細分化されると保険料の「格差」も所得に応じて拡充する。 なお、国基準13段階で階層区分をみると第1段階がもっとも多い(図1-3)。介護保険の被保険者は約3600万人だが、約650万人が生活保護受給者カ年収80万円以下と考えられる。 いっぽう年収320万円以上となる第9~13段階は約234万人ということだ。保険料額からだけでも高齢者の年収格差が浮き彫りとなる。 ただし、介護保険料から認識できる格差は、あくまでも収入のみの数値であり、既述の事例から、収入は少なくとも、かなりの資産家がいないわけではないということもわかる。また、現役世代のうちから老後の介護のために預貯金を増やして備えている者もいるだろう。
結城康博