「業界衰退を促進」パチンコ台の販売方法巡りホール側が悲痛な叫び… 法的手段も「望み薄」打ち手も厳しい状況続く?
全日遊連「文書送付は事実」
文書の内容を受けて、インターネット上では「ホールが潰れる原因はこれか」「ユーザーがしわ寄せを被っている」「最後に泣くのはユーザー」といった声や、“罰則”を望む声があがっていた。 一方で、全日遊連のHP等にはこの文書は掲載されておらず、同様に日工組、フィールズ側の声明等も確認されていない。 全日遊連に提出されたとされる文書について聞いたところ、実態調査結果を各都道府県遊協(連)、フィールズ、日工組に送付したことは事実であると認めたうえで、「ホール側から上がっている、遊技機の販売方法に関する問題については全日遊連でも把握している。今後も、問題のある販売方法について適宜是正に向けた対応を図っていく」とした。
対抗手段はあるものの「ハードル高い」
ではこうした販売方法について、ホール側が販売会社などを相手に訴訟を起こすといった対抗手段を用いることはできないのだろうか。 企業法務に詳しい三島広大弁護士は「現実的に被害回復をすることのハードルは高いといえます」と指摘する。 「ホール側の対抗手段としては、遊技機の販売方法が独占禁止法に違反する可能性があるとして、公正取引委員会に申告することが考えられます。 申告を受けた公正取引委員会が調査を行った結果、独占禁止法に違反する行為があると公正取引委員会が認めれば、違反行為を速やかに排除するよう命じる『排除措置命令』が下されることになります。 また、一定類型の独占禁止法違反行為に対しては、公正取引委員会から『課徴金納付命令』が下されることがあるほか、独占禁止法違反行為が民法709条の不法行為であるとして、民事上の請求として損害賠償請求をすることもできます。 なお独占禁止法では、同法に違反する行為を行ったことにより損害賠償請求を受けた事業者が、民法709条に基づく請求の要件である『故意又は過失』がなかったということを主張して損害賠償の責任を免れることはできないとされています」(三島弁護士) ここまでの説明だと、ホール側にも販売会社などに対抗する「チャンス」があるように見える。しかし、被害回復に至るにはまだまだハードルがあるのだという。 「損害賠償請求を受けた事業者にそのような『無過失責任』を負わせることができるのは、独占禁止法違反行為があることを公正取引委員会が認め、『排除措置命令』又は『課徴金納付命令』がされた場合に限られています。 また、実際に独占禁止法違反行為が公正取引委員会に認められた場合であっても、損害賠償請求が認められるためには、独占禁止法に違反した特定の不法行為によって、特定の損害が生じたという法的な因果関係が認められることが必要です。 独占禁止法違反行為と損害との因果関係が認められて損害賠償請求が認容されたというケースは極めて少なく、私が調べた限り、抱き合わせ販売の事例で損害賠償請求が認められている裁判例は見当たりませんでしたので、相当にハードルが高い請求ではあると思います」(三島弁護士) 上述した文書について、送付先のフィールズと日工組からどのような反応があったのか全日遊連に聞いたところ「回答を差し控える」とのことで、問題のある販売方法が是正される見込みがあるのかは不透明だ。 その上で、ホール側が販売会社らに対する法的手段をとるのも難しいとなれば、今後もホール側は厳しい状況が続くことが予想される。そしてホール側がどこで負担を補うのかを考えれば、打ち手にとっても苦しい状況が続くことは想像に難くない。
弁護士JP編集部