社説:政活費の全廃 自民の強弁崩す先例に
与野党が伯仲する国会の一つの成果と受け止めたい。 衆院は、使い道を明らかにせず支出できる「政策活動費」の全面廃止を含む政治改革法案を可決した。立憲民主党など野党7党が全廃の法案で足並みをそろえたため、一部を非公開にできる「公開方法工夫支出」の導入を目指した自民党は断念に追い込まれた。 政党から議員個人に渡される政活費は、政治資金規正法に定義がなく、何に使ったのか公表しなくてすむ「抜け穴」の一つとしてブラックボックスになっていた。 自民の派閥裏金事件の中で、二階俊博元幹事長が在任中の5年間で、約50億円を受け取っていたことが判明。幹事長権力の源泉として選挙対策などに使っていたとされ、野党が廃止を求めてきた。 しかし、岸田文雄前政権が数の力で押し切った6月の規正法改正では、領収書の10年後公開や年間上限額の設定を盛り込むことで政活費を制度化した。領収書は黒塗りで公開する可能性も残した。 そもそも脱法的な政治資金の使い方を、焼け太りで認めさせた感があった政活費だった。全廃は当然である。 形だけの規正法改正に対し、ノーを突きつけられた衆院選の反省もみせず、自民が珍妙な「公開方法工夫支出」なる文言を入れて、領収書非公開で上限なく使えるとするカネを温存しようとした姿勢自体、非難に値する。 しかも自民案は政活費の廃止を掲げながら、対象を政党や国会議員関係団体に限り、政治資金団体が新たな抜け穴になる可能性を残していた。野党がまとめた可決法案は全ての政治団体について、渡しきりの支出を認めない規定を設けている。 法案を審議した衆院特別委では、自民の説明は行き詰まりが目立ち、ばらばらだった野党案のうち、まず一致できる政活費の全廃で統一した法案を提出した。少数与党の自民は、採決すれば「野党に数で押し込まれる」とみて、丸のみせざるを得なかった。 一方、政治団体の政治資金を監視する第三者機関は、国民民主と公明の両党が提出した国会に設置する法案に自民、立民などが乗った。強い独立性や調査権限を持たせるよう中身を詰めてほしい。 最大の焦点である企業・団体献金の全面禁止は、来年3月末までに結論を得ると持ち越した。直近の世論調査でも国民の6割近くが求めている。自民の強弁を崩す野党の結束が欠かせない。