ニトリ、しまむらなどカスハラ対策が小売り業界で本格化するが…何でも「カスハラ扱い」する店が失う重要な情報
もちろん「できない」と断っても、繰り返し要求をしてくる場合や、脅迫的な言動やスタッフが身の危険を感じるような言葉を伴う場合は別ですが、対応者が一目で判断することは厳しいのです。 ■組織の数だけ「非顧客」あり 「非顧客」と判断するべきか否かは、組織があらゆるリスクを考えて決定します。 今までのクレーム対応は「お客様をファンに変える」という観点で行ってきました。この原則は、どんな時代が来ようと揺るぎません。しかし、「非顧客」であるにもかかわらず「お客様対応モード」で対応してしまえば、相手は増長し、無理な要求に拍車が掛かり、扱いに困るような厄介なクレーマーに変貌するでしょう。
逆に一般クレームの範囲なのに、判断を誤り「非顧客」として対応をしたら「何の改善もされないどころか、迷惑クレーマー扱いされた」と、利用者は憤慨してしまいます。 「顧客」「非顧客」の判断を、現場で対応しているスタッフ個人の感覚に委ねるのはとても危険です。対応者のスキル不足や個人のその時々の感情によってお客様を選別してしまうことは避けなければなりません。 また、同じようなクレームなのに対応に差が出て整合性がとれなくなってしまえば、組織としての在り方を問われる事態が生じます。その判断は現場スタッフに任せるべきものではないのです。
■正当なクレームを取りこぼさない このように、顧客の定義づけは必ず現場ではなく、組織がルールを整備して一定の基準で行えるようにしなければなりません。 組織として、「非顧客」の定義づけさえしてしまえば、現場のスタッフは、「非顧客」に無駄な時間を使う必要がなくなり、業務効率が上がり、働きやすくなります。 これからの組織に求められるのは、カスハラ対策により従業員の心身の安全を守り、働きやすい環境をつくると同時に、何がカスハラにあたるのかを見極めて正当なクレームを取りこぼさないようにすることなのです。
津田 卓也 :クレーム研修担当講師/Cube Roots代表