私ら、何か悪いことしたんでしょうか…年金月33万円・70代夫婦の「穏やかな老後」が一転、家を失う事態に戦慄。元凶となった、30代息子に日本年金機構から届いた「赤い封筒」の中身【CFPの助言】
年金機構からのさらなる「通知」で、窮地へ追い込まれる
そこから数日後、中西さん宛てに「差押予告通知書」が届きました。通知書には期限内に納付されない場合は、納付義務者や世帯主の財産を差し押さえる旨の警告が記載されています。 中西さんは怒りがこみ上げ、仕事から帰ってきた元気さんに詰め寄りました。 「おい! これはどういうことだ! あとできちんと納付するといっただろ!」 元気さんは「差押予告通知書」をみて驚きながら、 「まさか本当に差し押さえにくるなんて」と言いました。 中西さんは「とにかく差し押さえになる前にすぐに納付してこい!」と強く伝えました。しかし、元気さんは青ざめた表情で、「ごめん。今、まとまった金がなくて、80万なんて用意できない。どうすればいいんだろう」と答えます。 中西さんの怒りは爆発。「ふざけるな! 払えなかったらお前だけじゃなく、こっちの銀行口座や自宅も差し押さえられるんだぞ! そもそもなんでここまで年金を放置していたんだ」と問いただします。 父親のあまりの剣幕に、元気さんも観念し、今回の件について、正直に答え始めました。 年金の代わりに、投資で老後資金を作ろうとしていた 元気さんは国民年金を納めて将来年金を受け取るよりも、株式や投資信託などの金融商品で運用したほうが効率的に老後資金を準備できるといったネット動画を目にし、国民年金を納付せずに投資による運用を選択しました。 そして、元気さんは36歳から現在に至る2年間、国民年金を納付せず、毎月上限いっぱいである6万8,000円を確定拠出年金(iDeCo)で運用していたのです。そのうえ、運用しているiDeCoは、60歳まで換金できない商品のため、未納分に充てることができません。 元気さんは、年金を納付しなかった場合、将来受け取れる年金が減るだけで差し押さえにはならないだろうと安易に考えていたのです。 呆れ果てた表情の中西さんに対して元気さんは「父さん、すまない! 必ず返すから未納分のお金を貸してくれないか?」と頼み込みます。 実は、数ヵ月後に自宅のシルバーリフォームを控えていた中西さん。なるべく預貯金の支出を抑えたかったのですが、自宅の差し押さえがかかっているため、そんなことを言っている場合ではありません。「とりあえず、これをすぐに支払え! 必ず返せよ!」と、未納分の80万円を中西さんに渡しました。 さすがの元気さんも、このお金を投資に回すことはしなかったようで、全額を年金事務所に収め、差し押さえを回避することができました。この件でおおいに反省した元気さんは、中西さんにきちんと謝罪し、これからは責任を持って年金を払うと、決めたようです。