たくさんの「マッサン」がいた ── 「大阪はなぜベンチャー人間の宝庫なのか」
大阪発の新商品ニュービジネスが目白押し
スーパーマーケット、ターミナル百貨店、プレハブ住宅、小型ディーゼルエンジン、インスタントラーメン、おまけ付き栄養菓子、電卓、渦巻き型蚊取り線香――。いずれも大阪生まれの新商品ニュービジネスだ。ジャンルはさまざまだが、企業家が試行錯誤を重ねて創意工夫し、努力の成果が企業成長にとどまらず、社会発展の一助となった点で共通している。 ターミナル百貨店を考案したのは、現阪急阪神東宝グループを創業した小林一三だ。旧来の百貨店は前身が老舗呉服店だったため、都心にあった。小林は阪急電車の郊外展開を成功させるため、沿線の宅地開発を計画。郊外の住宅地から都心の勤務先に通う沿線住民の利便性を考慮し、ターミナル駅に隣接してデパートを開業した。 沿線で宝塚歌劇団、阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)も創設。鉄道、住宅、ショッピング、スポーツ、エンターテインメントなど、多彩な事業を総合的に展開する私鉄の多角経営モデルを確立した。
鍋からふきこぼれる煮汁に着目
インスタントラーメンは日清食品創業者、安藤百福の会心作だ。安藤は終戦直後の食糧不足を体験した。食糧の安定供給を目指して、自宅裏庭の小屋でインスタントラーメンの試作に没頭。当初は失敗の連続だったが、妻が天ぷらを揚げる様子から新たな着想を得て、「チキンラーメン」の商品化を成し遂げた。その後、カップめん「カップヌードル」を世に送り出す。今やインスタントラーメンやカップめんは世界各地で好まれ、世界の食生活を一新させた。 おまけ付き栄養菓子は、江崎グリコを設立した江崎利一が開発した。江崎は、ふるさと佐賀県の漁師が大きな鍋でカキの干し身を作る際、鍋からふきこぼれ捨てられてしまう煮汁に着目。大学に成分調査を依頼したところ、多量のグリコーゲンが含まれていることが判明。苦労を重ねて、グリコーゲン入りのキャラメル作りに成功する。 さらに江崎は、キャラメルにおまけのおもちゃを付けて販売することを決断。「体の栄養になるグリコ」「心の栄養になるグリコ」で、グリコの楽しみが2倍になるという発想だった。江崎の決断は子どもたちの支持を集め、グリコは現在につながるロングセラーとなった。販売促進戦略も江崎自身が工夫を凝らした。内外の観光客をひきつけてやまない道頓堀の巨大グリコ看板も、その一環だ。