ガザ地区の住民は「大量のアスベスト」で今後長らく苦しむ─人が住める環境を奪うイスラエルの攻撃はジェノサイドにほかならない
イスラエルが解き放った危険
1年あまりで4万人を超える死者を出している、イスラエルによるガザ地区への攻撃。それは無差別攻撃に等しく、犠牲者の大半は民間人だ。 【画像】瓦礫の間にテントを張って暮らすガザ地区の住民 イスラエルがガザ地区の人々の命を脅かす手段は、爆弾や銃のみではない。特にこの1年間、容赦のない建物の破壊によって、大量のアスベストがガザ地区の空気中に放出されている。 国連の推計によれば、爆撃によるガザ地区の瓦礫のうち約80万トンが、アスベストに汚染されている可能性があるという。
毎日が「9.11状態」
英国のアスベスト法の策定に関わったアスベストの専門家ロジャー・ウィリーは中東メディア「アルジャジーラ」に対し、現在の状況はガザ地区の住民にとって「死刑宣告」だと述べる。ガザ地区の空気中のアスベスト濃度は非常に高く、住民が今後、中皮腫などに苦しめられることは間違いないという。 その影響は長期的なものだ。2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊でも、現場にいた人や救急隊員などが高濃度のアスベストに曝露した。9.11当日に亡くなったのは2974人なのに対し、20年以上が経過した現在までにアスベスト関連疾患で亡くなったのは4343人にのぼる。 そして、イスラエルによる一回の爆撃に巻き込まれた人は、9.11に匹敵する量のアスベストに曝露しているだろうとウィリーは指摘する。ガザ地区の大半で日々爆撃が起こっているということは、毎日が9.11状態に等しいということだ。
逃げ場はない
アスベストが空気中に浮遊した際の最善の対応は、「車に乗ってできるだけ遠くまで避難すること」だとウィリーは言う。しかし、ガザ地区全域が汚染されているなか、ガザ地区の外に出られない住民たちに逃げ場はない。 それに、生き埋めになった家族や同胞を救出するために、多くの人々が防護服もなしに瓦礫のなかを歩き回り、素手でそれらを掘り返している。 たとえイスラエルがいますぐに攻撃をやめたとしても、放出されたアスベストは残り続ける。ウィリーによると、「安全な曝露レベル」などは存在せず、適切な浄化作業には何年もかかる可能性がある。